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Re: †Against Death† 【オリキャラ求む!!】 ( No.19 )
日時: 2010/04/30 19:53
名前: 獅堂 暮破 ◆iJvTprGbUU (ID: D0RCrsH7)

第七話 「comfort」

冷たく光るその瞳は俺を真っ直ぐに捕らえていた。
もう恐怖やら何やらで腰が抜けてしまった。
情けない……。
「……大丈夫か?」
差し伸べられた手に俺はゆっくりと見上げる。
「あ、霧島さん……」
冷たく光る瞳の正体は眼鏡を外した霧島さんだった。
失礼な事をしてしまった気がする。
俺は彼の手を取り立ち上がった。
「なんか、すみませんでした」
俺が謝罪の言葉を口に出すと霧島さんは一つ頷きを落とした。
怒っていないという意味だろうか。
……まぁ、そういう事にしておいたほうが自分は幸せだ。
「こんな時間にどうした?」
そう問われ、俺は素直に答えた。
「あーちょっとトイレに行きたくなってしまって」
眠れない、という理由もあった。
いろいろな事が一気に起こって頭が混乱しているせいもあるのだろう。
それに西澤の事も引っかかっているし。
考えないとは決めたものの、それはなかなか難しいものだった。
「……トイレはここを曲がってすぐだ」
そう言って去ろうとした霧島さんの服の裾を思わず掴んでしまった。
「あ、えーっと……その」
彼を引き留める気なんて全くなかったのに気付いたら裾を掴んでいた。
自分でもびっくりの出来事に説明の言葉が出ない。

「早くトイレに行って来い。話ぐらい聞いてやる」

霧島さんはどうやら俺の本心に気付いてくれたようだった。
俺の本心、それは“一人になりたくない”という子供みたいな思いだった。
気持ちの整理が付かなくて、椛にも心配かけて、一人になるのが何だか怖くて……。
トイレを言い訳に、俺は誰かに会いたかったのかもしれない。

トイレを済ました俺は霧島さんと寮の屋上に来ていた。
真っ暗な夜空にポツンと浮かぶ満月。
それは今の俺にはあまりにも眩しくて、少し目を逸らした。
「俺、どうしたらいいか……分からないんです」
霧島さんはただ頷きもせずに俺の話に耳を傾けている。
「あの死神の西澤って奴も、見覚えがあるのに思い出せない。父さんの事も、分からない事ばかりで。どうしたらいいのか……」
俺は今、どんな顔をして話をしているのだろう。
きっと、悲しく歪んだ顔。
そんな顔を見られたくなくて、両手で顔を頭ごと覆った。

「抗えばいい」

一言、そう一言霧島さんが呟いた。
「え?」
「分からない事があるなら調べればいい。分からないなら分かるまで粘れ。そして不安になったなら」

「今みたいにこうやって話せばいい」

霧島さんの手がそっと俺の頭を撫でた。
彼のその手は優しすぎて、思わず涙腺が緩む。
「っ……」
一筋の涙が頬を伝って行くのが分かった。
こんな情けない姿、見せるのは嫌だけど、涙は止まらずに溢れる。

そんな俺の傍に彼はいてくれた。

俺の涙が止まるまで傍で手を握ってくれていた。
それがあんまり温かいものだから、溢れる涙は止まらなかった。