ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: †Against Death† 【オリキャラ求む!!】 ( No.26 )
日時: 2010/05/01 16:13
名前: 獅堂 暮破 ◆iJvTprGbUU (ID: D0RCrsH7)

第八話 「critical」

さっきから自分に注がれる居心地の悪い視線。

現在午前七時半。
気付いたら自室のベッドにいた。
昨日、屋上で霧島さんと話していてそのまま寝てしまったようだ。
……随分と迷惑を掛けてしまった。
そんな事を思いながら食堂へ向かっていた。
そして今、夕日、日向先輩、椛、白秋に囲まれ席に着いている。
「えーあのー……なんすか?」
注がれる視線に苦しくなった俺はそう尋ねた。
すると四人はにっこり笑って、そりゃ不自然なほどに笑って言った。
「現、優しかった?」
「……はい?」
ガクッと肩が落ちた。
この人達は何を知りたくてこの質問をしたのか。
「あの現が、あの性格歪み眼鏡が人を慰めるなんて。初よ!? 今まで一緒にいるけどそんな事なかったわ」
夕日が軽く興奮気味にそう語る。
「ホントだよ。しかも、泣き疲れて寝ちゃった梓都ちゃんを姫抱きで自室まで運んだって……。俺だったらアイツ、きっと屋上放置だぜ?」
その言葉を聞いて口に運んでいた卵焼きが箸から転落した。
何故。
何故この人達は昨日の状況を実際にその場にいた俺より知っているんだ。
どこからその情報は入ってくるんだよ。
そう思わずにはいられなかった。
「現、君にご執心みたいだね」
白秋は目を本に向けたままそう感心したように呟く。
俺は昨日の出来事をはっきりと鮮明に思い出す。
今思えば、かなり恥ずかしい気がする。
あんなに弱みを人に見せてしまうなんて、きっと今後これ以上の失態はないだろう。
「……梓都、顔、真っ赤」
椛にそう言われ、さらに俺は恥ずかしくなる。
机に顔を伏せて必死に取り繕うとするが、それもこの人達の前では無効だった。
「貴方、かわいい所あるのねー」なんて夕日に笑顔で言われる。
あぁ死にたくなってきた、まあ、一回死んでるけど。
四人から集中攻撃を受けた俺はもう限界だった。
このまま燃えてしまいそうな勢いだ。

するとゴンッという鈍い音と一緒に彼の声が降ってきた。
「低脳馬鹿が」
ふと顔を上げてみれば、あの音は日向先輩が霧島さんに殴られた音だったようだ。
……罰が当たったな。
「遅刻するぞ」
そう一言残して彼は食堂を出て行った。
「……あ、マジだ」
俺は腕時計を確認した後、残っていた卵焼きを口の中に詰め込んだ。
「ごちでした」
そう言って奴らをその場に放置し、学校へ向かった。

「……ご愁傷様」
夕日達も日向の上で手を合わせて食堂を出た。

   *

俺は小走りで昨日通った学校から寮までの道を進む。
だが、それは大きな間違いだった。
「迷った」
自分の方向音痴さを思い知った。
これなら夕日達を待ってから来たほうが良かった。
なんて思いながらもとりあえず道を進む。
永遠と続く並木道。
確かこの道のはずだ。
しかし学校の姿は全く見えない。
「やっぱり迷ったな」
俺は周りを見渡すが人も、家すらないその風景に少し違和感を覚える。
昨日通った時は確か、数件家が建っていたはず。
なのに目に入るのは木々ばかり。
「……おかしい、よな。これ」
戻ろうと振り返った時だった。

「いらっしゃーい。柴崎 梓都」

幼い少女の声に、俺は声の聞こえる上の方へ目を向けた。
「死神、か……」
西澤達と同じ雰囲気の少女が木の上に座っていた。
黒い髪をツインテールにし、裸足で不気味な笑みを浮かべる少女。
手には紅く染まった巨大な斧。
異常、その言葉がぴったりと当てはまる少女だった。
「私は、キル・ソルベート。そして彼は黒雨 牙羅(クロウ ガラ)」
少女、キルが指差す俺の後方には黒い長髪、紅い瞳の青年が立っていた。
手にはやはりナイフが持たれており、早く戦わせろと言わんばかりの目を向けてくる。
この状況は非常にやばい。
俺は今、なんの武器も持っていないし、戦う力もない。
なのに、いかにも強そうな敵が目の前に迫っている。

ピンチの時、よく力を出す奴とかいるけど
あれは漫画の中だけの話だ。

世の中そんな自分の都合よく進みはしない。