ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: †Against Death† 【オリキャラ求む!!】 ( No.31 )
- 日時: 2010/05/02 16:46
- 名前: 獅堂 暮破 ◆iJvTprGbUU (ID: D0RCrsH7)
第九話 「homicide」
前方にはキルと名乗る死神少女。
背後には牙羅と呼ばれた死神青年。
そして二人に挟まれ絶体絶命状態の自分。
「ねぇ、君はどんな消え方がしたい?」
そう問うキルの表情はかなり楽しげで、背筋が凍るのを感じた。
背後の牙羅の殺気も半端なものじゃない。
威圧感に押しつぶされそうになる。
「っ……。お生憎、消されたくはないんでね」
俺がそう答えれば、彼女はさらに笑みを深めた。
「そうこなくちゃね。牙羅、退いててくれる?」
牙羅は舌打ちをしながらも後ろへ退いた。
キルの殺気の強さはかなりのものだった。
額から嫌な汗が流れ頬を伝う。
「キルね、ストレス溜まっちゃってるんだぁ。だから、君で発散させて?」
そう言ったキルは木の上から俺の目の前に飛び降り、斧を振りかざす。
「ぐっ」
俺はそれをぎりぎりで避け、後方へ下がる。
「ふぅーん。やっぱり理事長さんが生き返らせただけあって反応がいいね」
確かに、今攻撃を避けた時いつもより身体が敏感に反応した。
身体能力が上がっているのか?
「でも、次は避けれないよ」
キルがポケットから取り出したのは数本の小型のナイフ。
それを回転をつけ俺に向かって投げる。
さすがに高速で飛んでくる数本のナイフを避けるのは無理だった。
手で庇おうとするが、頬や腕、足を掠りその部分から血が流れる。
地面に落ちる自分の血を見て、あの事件の事を思い出す。
「んー……。またあんな痛い目見るのは嫌だな」
鼓動に合わせて痛む傷。
俺は近くに落ちていた鉄パイプを握る。
「そんなんんで、キルと殺り合うつもりなの? キキキッ、無理に決まってんじゃん」
キルは斧を俺の頭上から振り下ろす。
鉄パイプで受け止めたが、恐らく鉄パイプが折れるのは時間の問題だろう。
「ほら、折れちゃうよ?」
さらに力が加わりみしみしと鉄パイプが軋む。
金属音と共に砕けた鉄パイプが地面に落ちる。
「くっ……」
近くにもう武器となりそうなものをない。
絶体絶命とはまさにこの状況だろう。
「まーだまだ楽しませてよぉ」
そう言って俺を壁に押し付ける。
「っ」
首に彼女の爪が食い込み、そこから血が流れる。
「やっぱり血の色って綺麗だよね。……君の血、もっと見たいなぁ」
そのまま斧を俺の首に突きつけた。
「きっとこのまま切っちゃったら痛いよねぇ。いい悲鳴、聞かせてよ?」
振り下ろされる斧。
俺は迫る命の危機に目を堅く閉じた。
その時だった。
『お前が消されるのはまだ早い。閉じた瞳を開け、梓都』
頭に直接響く父さんの声。
俺は言われた通りに目を開いた。
迫り来る斧が何かによって阻まれる。
さっきまで笑みを浮かべていたキルの表情が強張り、近くで様子を見ていた牙羅も驚きの表情を浮かべている。
「っ、何よ急に……」
強い力で押し戻される斧。
とてつもない恐怖にキルは後方へ飛び移った。
「アイツ、急に強くなった。あれは、柴崎 梓都じゃない!!」
キルがそう叫ぶと梓都は薄い笑みを浮かべ立ち上がった。
「そうだよ。俺は“梓都”じゃあない。今はちょっとこの子の身体を借りている、“黎”だ」
その言葉に二人は目を見開いた。
「れ、い?」
キルが一歩二歩と後ろへ下がる。
その表情は恐怖に驚きと恐怖に染まっていた。
「柴崎 黎(シバサキ レイ)、成程な。隊長がコイツを殺せと言っていた理由はこれか」
牙羅は引きつった笑顔でそう呟く。
「柴崎 黎」
「過去最悪の死神殺し、か」
キルの後ろから声が聞こえる。
「……稀緒、久しいな」
梓都、いや黎は目の前に現れた稀緒に鋭い視線を送った。
「アンタ、死んだのになんでいる訳? ……精神だけか、身体は梓都だよな」
稀緒の言葉に黎はぴくりと反応する。
「いくらアンタでも自分の息子の身体では戦えねぇだろ? 俺と殺れば必ず怪我するぜ?」
稀緒がそう言えば、黎は悔しそうに眉を寄せた。
「どうやって精神乗っ取ってるか分からねぇが、今日のところは帰らせてもらう。行くぞ」
稀緒はそのまま空間に歪みを作りキル達と共に去っていった。
「今回は俺が助けたが、次は本当にお前が“覚醒”しなきゃならない、梓都……」