ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 寂しい町、他人の手。オリキャラ募集 ( No.19 )
日時: 2010/05/02 10:33
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: fh.wbL8r)

第5話

「孝政おは……行っちゃった……」
「どうしたんだろうねー」

途中廊下で御手洗とスクーシニャに会ったが、僕はそれを無視して教室へ走った。
まさか……まさかね……
僕は昨日自分が叫んだ言葉を思い出した。

『陽子さんが同級生で、同じクラスで、普通に仲が良くて……
 そして……明日の退屈な数学の授業中にテロリストがやってくる!
 僕は不思議な力に目覚める!』

そんなの有り得ないと思う反面、僕の中の不安はどんどん大きくなっていった。

ガラッ。

僕は勢いよく教室のドアを開けた。
教室はいつも通りの光景が広がっていた。
僕は教室を見渡した。

何もない……いつも通りだ……

さっき哀舞達が言ってたのは冗談か、別の何かだろう。
濱川さんが同級生でしかも同じクラスなんて有り得ない、妄想だ。
僕は安堵の溜息をして、自分の席についた。

「おはよう。孝政」
「あ……学……おはよ……」

僕の心情なんか関係なく、もちろん学はいつもの調子。
よく皆に言われる『THE☆仏様の笑顔な学』がそこに居た。
彼は日本人らしい顔をしていた。
仏様と日本人形と浮世絵を混ぜて平均的にした感じだ。
彼が笑って目を細めると仏の様になる。
僕の顔は今強張っていた。
なるべくいつも通りに振舞おうとしても全然出来ない。

「おい孝政、なんでさっき俺を無視した訳ー?
 超ショックなんだけど。生まれて始めて無視されたんだけど?」

丁度良くそこへスクーシニャが入ってきてくれた。

「ごめんごめん。ちょっと急いでて……」
「ふーん……まぁいいよ。孝政の事情も察してやるよ」

学が事情?と首を横にした。
スクーシニャはかわいらしい顔に満面の笑みを浮かばせていた。

「事情って……たとえば何の……?」

次にスクーシニャはクルリと後ろを向いて。

「それは一番自分が分かってるだろ」

そう言って彼は教室を出て行った。
廊下からはスクーシニャちゃんおはよーや今日もカワイイー!といった女子の声が聞こえた。

「スクーシニャ……やっぱアイツ本当は以外と性格悪いのかも知れないな……
 じゃ、俺日直だから……」

そう言って学も教室から出て行った。
スクーシニャは小学校六年生の時に突然転校してきた。
最初皆が彼を女の子だと思った。僕もそう思っていた。
教室に入って来た時の自己紹介で彼が男だと知らされた時、皆がビックリした。
その後、彼の周りには男子ではなく女子が集まった。
『髪の毛きれいだね』『どこの国から来たの?』『かわいいね』
彼は今よりも可愛らしく女の子の様な顔を迷惑そうにしていた。
そして、クラスのガキ大将に目を付けられてしまったのだ。
その日の放課後、彼はガキ大将とその取り巻きに囲まれ、苛められていた。

『おまえだけなんで髪の毛や目の色が違うん?』
『男の癖に肌白くて気持ち悪い!』
『オナベなんじゃねーの!うわ、もう泣いた!泣虫!弱虫!』

その後女子達が止めてくれたが、酷い物だった。
だが、彼にとってはまだ終わっていなかった。
スクーシニャは次の日からなんとガキ大将の兄や姉と仲良くなり始めたのだ。
すぐに立場が逆転した。
ガキ大将の兄はここら辺じゃ有名な暴走族の族長で姉もそれなりの力を持った不良。
そんな人間に可愛がられているスクーシニャはすぐに皆に恐れられた。
高校生になった、彼も同じ高校だった。
今まで交友はなかったが、何故だか仲良くなっていた。

キーンコーンカーンコーン……

チャイムがなった。

「はひゃー!セーフ!よかったよかった!」

そこへ一人の女子生徒が急いで教室へ入ってきた。
僕は目を見開いた。
今、この教室へ入ってきた女子生徒……

その人は、濱川陽子だった。

Re: 寂しい町、他人の手。オリキャラ募集 ( No.20 )
日時: 2010/05/02 16:22
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: fh.wbL8r)

「それで余りにも可笑しいからついつい、兄にジャーマン・スープレックスかけちゃってさー
 そしたらお隣さんがいつの間にか救急車呼んできて……本当に大変な朝だった!」

今僕の前でこうやって笑いながら話しをしているのは、濱川さんだ。

「ジャーマン・スープレックスはついついじゃできねーよ!」

スクーシニャは濱川さんに突っ込みを入れる。
まるで、毎日の光景の様に。
濱川さんは二年生だ。
なのに何故か一年の教室に居て、僕等と一緒にお昼を食べている。
授業も普通にこの教室で受けていた。

妄想が……本当になった……

それしかない。
いや……新手のドッキリか、それとも僕は夢を見ているのか……?
ほっぺたをつねった。もちろん痛い。
なんだ……なんなんだ……?

「ねぇ、タッカー。お弁当食べないなら貰っちゃうけど?」

突然濱川さんが話しかけてきた。
僕はビックリして舌を噛んでしまった。

「ひひゃう!」
「だ、大丈夫本当に!」

濱川さんが心配そうな顔で僕を見る。

「へ、平気れす!舌を噛んだだけですから!」
「それ平気じゃないと思う……」

濱川さんの横に居る德川樰は僕を指差して笑っている。
今、僕はあの憧れの濱川さんと会話をしているんだ。
こんなのも良いかもしれない。
スクーシニャの話では濱川さんに今、彼氏とかが居ないらしい。
妄想がしっかりと本当になったのだ。
しかし、問題は一つ……
今日の五時間目の数学の時間に現れるかもしれないテロリストだ……
妄想が本当になる。
テロリストが現れ、濱川さんを人質にする。
そして僕が不思議な力に目覚める。
今までの事からするとテロリストは現れる可能性が高い。
五時間目……来たら戦うしかないのか?
もしかしたら死者が出るかもしれない。
僕と濱川さんが死ぬのは無いとして……
あぁ、そうだ!
急いで僕は空になった弁当箱を片付け、席を立った。

「行き成りどこに行くんだ?孝政」

学が不思議そうな顔で僕を見た。

「ちょっと忘れ物を取りに行ってくる!」

なんでもっと早く気付かなかったんだ。
僕は馬鹿だ。あの『力の欠片』でテロリストを無かった事にすれば良いんだ!

急いで僕は自分の家に向かった。