ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 絶対少女!!  ( No.19 )
日時: 2010/04/21 20:34
名前: ユエ (ID: KHOJpGst)

そういえば。

国語の時間、わたしはシャーペンを止めて思い出す。
一番後ろの窓側の席。 後ろから二番目の真ん中の席。

この二つの席が、空いていた。

ただ休んだだけじゃねぇか。 と、思うかもしれない。

だが、この二つの席は五日前から空いていたのだ。
先生はこの二人の欠席理由を言わない。 何故?

訊いても、答えてくれないのだ。

ま、何かあるんでしょうね。

わたしは再び、ノートへと視線を戻す。 が。

一番前の席が、空いていることに気づいた。
これは今日からだ。

欠席者、多くないか? インフルエンザとかじゃないよね?

(───心音)

突然、隣からりあむが小声でわたしを呼んだ。

(な、なに?)

(今日、心音あたるぜ。 出席番号、二番だろ?)

(え、どうしてわたしがあたるの?)

(カンだよ、カ・ン♪)

ニコッとりあむが笑った瞬間、

「じゃあ、ここを───……泉」

国語の先生がそう言ってきた。 読め、と言っている。
うわ、本当だ。 りあむのカン、当たったよ。

あ、別にこれは、超能力じゃないからね。
単なるりあむのカンだから。

わたしは教科書の文字を読むのだった。

◇   ◇   ◇

「最近ね、行方不明者が出てきているんだよ」

日下部さんは続ける。

「ついでに、大きな氷の塊が最近出没してるの」

日下部さんはわたしたちを見る。

「何か、知っていることは?」

わたし、飛鳥、りあむ、時雨。
合計四人は互いに顔を見合わせた。

「行方不明者、ねぇ」

りあむは小さく呟いた。
すると、時雨が小さな声で発言をする。

「あ、あのっ。 
 その大きな氷は、普通の人間が作り出せる大きさなんですか?」

ぱたり。
そこでわたしたちの動きは静かに、静止。

日下部さんは顔を輝かせた。

「素晴らしいね、時雨くん……!」

「ぼくたちみたいに、氷系の能力者がいたら、ソイツの仕業ってことかな?」

飛鳥がふわふわと宙に浮きながら、楽しげに言う。

「飛鳥くん、そうだよ。 そういうことだよ」

日下部さんは満足げだ。

「氷かぁ……。 ここはエリカさんの出番だな」

りあむはニヤニヤと笑いながら言う。
エリカさん、っていうのは紅エリカさんという人。
くれない・えりか。

わたしたちと同じ能力者で、【紅炎少女】。
世界に存在するあらゆるものを焼き尽くす能力。

ちなみに、有名な名家である【紅家】の令嬢なのだ。

「でも、行方不明者との繋がりは?」

わたしは問う。 すると、皆は再び考える。

「わ、分からないですぅ」

困ったように言う時雨。

結局、全く何も分からないまま時間は過ぎていったのだった。

◇   ◇   ◇

あの人の別名は、二つある。
一つは、【××少女】。
そしてもう一つは、【魔女】だ。

能力はまるで、魔女のよう。
性格はまるで、魔女のよう。

「まだまだじゃの、×××……?」

あの人、別名魔女は不気味に笑いかける。
口が耳まで裂けてもおかしくは、ない。

「せめて、能力者一人くらいはいるのう?」

「能力者、ですか」

ならば、オレの憎き兄でも連れて来ようか。
あ、でもそんなことしたらオレが殺せなくなる。

オレは自分の手で、兄を殺したいのだ。

あぁ、と魔女はひらめいた。

「一度だけ、あの少女と会話してみたかったのじゃ」

誰ですか、とオレは問う。
そして、その名を聞いた瞬間。

オレの心は、
憎き兄の近くへ行けるという喜びと、
魔女と同じような能力を持つ人の場所へ行くという恐ろしさに、

押しつぶされてしまいそうだった。