ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 絶対少女!!  ( No.30 )
日時: 2010/04/24 20:05
名前: ユエ (ID: 8HTDhaI.)

日下部さんの研究所のとある、一つの狭い部屋。
ここには大きな窓が一つだけ。 あとは何もない。

そこに、【歪曲少年】藤堂りあむは、いた。
床に座り、ぼんやりと夜の景色を見つめている。

月明かりがりあむを照らす。

「…………」

そこへ静かに、【紅炎少女】紅家のご令嬢、紅エリカがやって来た。
炎のような紅い瞳が、りあむを見つめる。
炎のくせに、その瞳には光が宿っていない。

「エリカさん、どうしたの……?」

りあむは振り向かずに言う。
エリカは部屋の入り口に立ったまま、答える。

「……りあむ君は、親がいないわよね?」

「エリカさん、どうしたの? 基本無口だったのに。
 この一ヶ月間、何かあったの?」

はは、と力なく笑いながらりあむは言う。
それでも、エリカの表情は無だった。

「────ああ、おれは【一人っ子】だよ」

諦めたように、りあむは言う。

「……それは、本当? 兄か弟がいるんじゃない?」

りあむの動きが全て止まる。 
そして、ようやくエリカの方を見る。
りあむの表情は、凍り付いていた。

それでもエリカは喋り続ける。

「同じ、能力者のね」

「───どうして?」

「え?」

「どうして、そんなことを言い出すんだ、エリカさん?」

くす、とエリカさんが笑ったような気がした。

「私を襲った少年は、りあむ君ソックリだったもの」

ばきょっ。
りあむの近くで、床の一部が歪んだ。
たぶん、無意識にやってしまったのだろう。

「────藤堂、れおん」

歪んだ床を見ながら、りあむは呟く。

「おれの、双子の、おとうと、だった……」

やっぱりね、とエリカは思う。

「双子の弟の、藤堂れおん君?」

「おれと同じ能力者で、【寒冷少年】藤堂れおん」

次はハッキリと。
そして、静寂が訪れた。

◇   ◇   ◇

翌朝。
心音はいつも通りに学校に登校してきた。

そして、【いつものように時雨と会話して】。
そして、【いつものようにりあむと会話して】。

いつものように担任が来てホームルーム、のはずだった。

チャイムがなり、皆が席につく。
そこで、心音はようやく気づく。

────クラスの半分が、いない?!

クラスの半分がいなかった。 来てなかった。
しかも、担任まで来なかった。

一応、副担任の先生が来てくれた。

「先生、どォして担任とクラス半分いないんですか?」

一人のクラスメイトが、副担任の先生に訊く。
すると、副担任の先生は困った顔をして、

「ごめんなさい、それが……連絡がないんです」

と答えるだけだった。

(最近ね、行方不明者が出てきているんだよ)
日下部さんの言葉が、フラッシュバックする。
いや、いやいやいやいや。

そんな、
まさか、
ねえ?

偶然ですよね、日下部さん。