ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 絶対少女!!  ( No.43 )
日時: 2010/05/03 18:45
名前: ユエ (ID: 0VC4e9y5)

【絶対者】

その言葉がわたしの頭の中を、駆け巡る。
ぐるぐると、時計の針のように。 駆け巡り、止まらない。
止まらないし、止められない。

───素晴らしい能力だ。

反射的に、声のした方向へ体を向ける。

───“絶対者”だ。 神に等しい。

人影をとらえ、右腕を伸ばし指先からエネルギーの塊を飛ばす。

───それは、神に等しい素晴らしい能力!

バキィイイイイイイイッ!
体育館のステージがバラバラになる。

「危ないなあ……、まったくもう」

立ち込める煙の中から、一人の少女が姿を現す。
腰まで伸びた黒髪。 大きな漆黒の瞳。
あまり見かけないセーラー服。

わたしは、こいつを、知っている。
二年ぶりに会う。 最悪の再会だよ。

「どうしてここにいるのかな……!
 【反射少女】、北條美羽!」

ニコ、と北條美羽(ホウジョウ・ミウ)は微笑む。
わたしたちと同じ能力者、【反射少女】。
どんな攻撃も能力も、全て反射させる能力だ。

「お久し振りー☆ “神に等しい”能力者さん!
 ───“絶対者”の泉心音っ」

ピースサインをしながら、美羽は言う。

「もう会わないと思っていたのに……な!」

わたしは全力で美羽のところまで走る!
走るのはけっこうはやい方なんだよね。

そして、目の前で止まる。

「この北條美羽に、攻撃しても無駄。
 全部全部ぜーんぶ、反射されてオシマイ。
 自分自身に攻撃するってことくらい、知ってるよねっ?」

ニヤ、と不気味に笑う。

「分かってるよ」

「そりゃ、そうだよねーっ☆
 ていうか、忘れられるはずがないよね……?」

五月蝿い。

「“二年前”のことは忘れられない仕組みだもんね」

黙れ。

「勿論、あの場所にいた能力者全員、忘れてない」

喋るな!

「───“恐ろしき神の能力。 素晴らしきその能力”。
 あははっ、はははは! ははははははは!
 ちゃーんとコントロールできなきゃね……?」

わたしの顔を覗きこみ、ニヤッと笑う。
本当に、こいつは、二年前と、何も、変わらない、奴、だ!
もう喋るな、黙っていろ、五月蝿い───!!

「あなたは“絶対”に───!」




「無駄でしょ」



わたしが振り上げた右腕を掴む美羽。
ひどく冷たい、氷のような瞳と声。

「全て反射されるんだからね」

ゆっくりと右腕を下ろし、

「心音は美羽に攻撃できない」

思いっきりわたしを吹っ飛ばす!
そうだ、美羽は空手とか柔道やってるんだった……!

背中に激痛が走り、わたしは床に仰向けに倒れる。
いたたた……痛すぎでしょ、これ。

「何も変わらないね、心音」

ゆっくりと近づく美羽。 

「たった一人───」

美羽が言いかけた瞬間、美羽の周りにたくさんの炎が現れた。

「なッ?!」
慌てて、美羽はあたりを見回す。

「……厄介な能力者だね」

静かに、エリカさんがやって来た。
わたしたちの学校の制服を着て。