ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 絶対少女!!  ( No.46 )
日時: 2010/05/05 17:23
名前: ユエ (ID: NSuGMJPT)

「えッ……。 エリカ、さん?!」

わたしは思わず声に出してしまう。
指先で炎を弄びながら、無表情で近づいてくる。
どうしてエリカさんが制服を着て、ここに?!

「くれない……ッ、エリカ……!」

チッと舌打をしながら、美羽はエリカさんを睨む。

「……久し振りね、【反射少女】の北條美羽」

ひょいっと小さな炎を、美羽に向けて放つ。
美羽は周りに見えない壁を作り出す。
この壁で、全てを反射するのだ。

「忘れちゃったああ? 美羽は【反射少女】だよッ」

バシッという音がして、炎が跳ね返される。
その炎はエリカさんのところまで来て───!

「エリカさん、炎がッ……!」

「───この“二年”という年月は便利ね」

そう言った瞬間、エリカさんは炎に包まれた!
嘘……うそ、でしょ?!
エリカさんが死んじゃうよッ?!

「あはははっははッ、あーはははっははは!」

美羽が笑う。
だが、その笑い声は次第に小さくなっていった。
───なぜなら、

「私は紅家の次期当主、紅エリカよ。
 その証拠はこの瞳。 そして、私の能力」

ゆっくりと、炎の中からエリカさんが出てくる。
しかも、火傷ナシ。 無傷で普通に。

「なななッ、どういうこと?!」

無表情で、エリカさんは言う。

「……私は【紅炎少女】よ」

一言だけ言い、エリカさんは両手から炎を放つ。
ぼうっとしていた美羽は、いそいで見えない壁を作る。
ちょっとだけ遅かったようで、美羽が後退する。

「美羽はッ……! 全て反射するんだよおおお!」

バキッ。
そんな音がして、大量の炎が再びエリカさんを襲う。

「これくらい炎浴びれば、終わりでしょっ」

だが、再びエリカさんは無傷無表情で出てくる。

「ッ、どういうことッ」

「言ったはずでしょー」

適当に言いながら、両手で炎を生み出した。

「この“二年”という長い間で、私は成長したの。
 炎に愛された紅家。

 私、炎は効かないの……っ!」

「〜〜ッ!」

今までより巨大な炎を放つ!
ギリギリで、美羽は壁を作り反射させようとする。
美羽の顔が苦しそうに歪む。

つ・ま・り?
エリカさんには炎攻撃が効かないってことだよね?

しかも、【炎に愛された紅家】って言ってたし。
紅家の人に、炎は無効なのかな?

「もしかして、苦戦かなっ? 美羽」

突然、知らない少年の声が体育館に響いた。

「……! れおん!」

ピタリ、と美羽とエリカさんの攻撃も止まる。
“れおん”と呼ばれた少年。

棒つきキャンディを口に銜え、少し意地悪そうな顔をした少年。
───誰かに、似てる。 いや、気のせいだよね。

少年が一歩、足を踏み出す。
その瞬間、周りの空気が凍りつく。

「オレ、初めて見たかも……。 【絶対少女】」

「へっ?! わたし?!」

「うん、そうだよ。 ……オレの名前はれおん」

ピッとまっすぐに、右腕を伸ばす。
その瞬間、バキバキと大量の氷がわたし目掛けてやって来た。

ん? ───氷? 

「“絶対”に氷はなくなる」

フッと音もなく氷は消える。
すると、満足げな顔でれおんは笑った。

「───分かった」

わたしはれおんを指差した。

「あなたでしょう。 みんなを凍らせたのは!」

「……ピンポーン☆ 正解だよぉ。
 オレの氷の上から、美羽の反射をカバーさせて。
 【反射する氷】の完成だよ」

だから、わたしの能力も時雨の能力も効かなかったのか!

「じゃ、正解したから賞品あげるー☆」

パチン、と指をならす。
すると、バキン、と大きな氷の塊が二個落ちてきた。

「……! 心音!」

エリカさんが、二つの氷を指差す。
……え?

「飛鳥? 時雨?」

氷になった飛鳥と時雨だった。