ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 絶対少女!!  ( No.55 )
日時: 2010/05/13 16:20
名前: ユエ (ID: FzVK5xRK)

「ワケ分からないよーッ!!」

学校の人たち、行方不明の人たちは戻った。 完全に。
勿論、凍ったという出来事は覚えていない。
これを覚えていたのは、能力者のみ。

そしてここは、日下部さんの研究所。
というか、能力者のたまり場だったり……。

「あ、飛鳥くん? 何がだい?」

日下部さんが苦笑いで訊いた。

「だって───「日下部さあああん!!」

飛鳥の言葉を遮ったのは、凍らされていたりあむ。
ぐい、と飛鳥を日下部さんから引き離す。

「ふあああ……藤堂せんぱあい……」
りあむが後ろへ、飛鳥を追いやる。

「次はりあむくん?」

「心音はどーなっちゃうんだよッ!」

りあむが叫んだ瞬間、無意識のせいで近くにあった本が90°に曲がる。
りあむはよく、無意識で能力を使ってしまうのだ。

「こ、心音くん?」

「ずうっと、目ェ覚まさないじゃねーかっ!!」

そう言って、医務室の方を指差す。

「大丈夫だよ……。 少し疲れちゃっただけだ」

「………っ」

この様子を、時雨とエリカさん、飛鳥がニヤニヤと見ている。

(りあむ、バレバレですね〜)

(若いのは良いわね……)

(エリカさん、まだ20歳にもなってないのに)

◇   ◇   ◇

“絶対者”だから、“絶対者”だからって……。
皆、勝手に期待して、勝手に盛り上げていく。

だからわたし、頑張らなくちゃ……って。

想っただけなのに。

「……む?」
目を覚ますと、真っ白な天井が目に入る。
それから、ふわふわとした感じ。

───あ、ここ。 研究所の医務室だ。

「目を覚ましたかい? 心音くん」

静かに医務室に入ってきた日下部さん。
……でも、あれ? どうして、わたし??

「く、日下部さんっ! どうして、わたしっ……」

「疲れちゃったみたいだね」

「む……あ、そ、そうですか」

近くにあった椅子に座り、日下部さんは少し真面目な顔をする。
何か、話すんだろうな。

「心音くんは、このメンバー……って、
 飛鳥くん、りあむくん、エリカくん、時雨くん、心音くん、ね。
 
 この中で一番最初にここに来たのは、誰か知ってる?」

いきなり、何を言い出すんだろう?
ま、いいや。 答えよう。

「りあむ、ですよね。 その次がエリカさん、飛鳥、時雨、わたし」

正解、といように親指を立てて笑う。
ちょっと子供っぽい……かも。

わたしは三年前に自分の能力に気づいた。

「じゃ、能力者を大きく二つに分けると?
 ってこと、教えたっけ?」

……きいたことない。 教えられてない。
知らないよーぅ。

どうやらわたしは、すぐに顔に出るようだ。
日下部さんが丁寧に説明してくれた。


能力者は大きく二つに分けられる。

“言霊タイプ”と“意志タイプ”。

“言霊タイプ”というのは、声に出さないと能力を使えない能力者。
この研究所でいうと、わたしと時雨。

“意志タイプ”というのは、思うだけで能力を使える能力者。
この研究所でいうと、エリカさん、りあむ、飛鳥。

「分かった、かな?」

「あ……っ、はい」

ぴん、と人差し指を立てて、日下部さんは再び話し出す。

「でもね、心音くんは“言霊タイプ”なんだけど、少し違うんだ」

「??」

可笑しそうに、日下部さんは笑う。

「心音くんね、両方のタイプなんだよ」

「こ、言霊じゃないんですか?!」

「いや、そうなんだけど。 “意志”でもあるのっ」

「は、はあ……」

「ね、もう大丈夫だよね? ちょっと来てくれない?」

ひょいひょい、と手招きをする日下部さん。

◇   ◇   ◇

能力研究所、地下一階能力ルーム一号室。

それは真っ白な部屋で、強力な壁がある。

「起きても大丈夫なのか?」

りあむが心配そうに訊いてきた。
ここの部屋にいるのは、わたし、りあむ、日下部さん。

「う、うんっ!」