ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 絶対少女!!  ( No.6 )
日時: 2010/04/18 18:06
名前: 夕月 (ID: 0xGRiuWU)

第一章 空白の音とサヨナラ

真っ白い壁、真っ白い天井だけが広がる。
どこにも穢れがなく、ただ真っ白だけが広がる空間。

そんな空間の真ん中に立ち尽くす、一人の少女。
ワンサイドに縛ってある黒髪に、閉じた瞳。

そして少女は、目を開ける。

「“絶対”に、わたしはこの部屋から脱出する───!」

両手を広げて、大きな声でそう叫ぶ。

バキッ………メキメキメキメキ……!!

真っ白な空間が、土砂崩れのように崩れていった。
壁と天井は吹っ飛び、少女だけが取り残された。

『心音くん、やりすぎじゃないかな?』

少女のイヤホンに、若い男の声が響いた。
ニコッと少女は微笑みながら答える。

「でも、いいじゃん。 脱出可能になったワケだし」

『あのね心音くん、この部屋は実験部屋なの!
 お金とか結構かかるの! こんな壊され方……』

男の声のトーンは、どんどん下がっていった。
最後に聞こえたのは、大きなため息。

『うん、いいよ。 こっちまで戻ってきてね、徒歩で』

呆れたような声がしたのだった。

まったく、あの部屋造るのにどれだけお金がかかるんだか。
一回くらい、いいじゃないか?

わたしはてくてくと歩きながら、そんなことを思っていた。

わたしの名前は、泉心音。 いずみ・ここね、だよ。
十六歳の高校一年生だ。

冷たい空気が漂う廊下を、右に曲がり小さな部屋に入る。

そこには、困った表情を浮かべた一人の男。
見た目は二十五歳くらいで、白衣を着ている。

名前は日下部総悟。 くさかべ・そうご。
【超能力】を研究する人たちの、一人だ。

「心音くん、君の能力は素晴らしいよ」

よほど、破壊された部屋のことを思っているのだろうか。
棒読みにしか聞こえない。 ま、いいか。

「じゃあ、もうわたしの研究はお終い?」

「いや、もう少しだけさせてくれ」

ちぇっ、もう終わる頃かと思っていたのに。 仕方ないなあ。
A4サイズの紙をひらひらとさせながら、日下部さんは喋る。

「じゃあ明日、飛鳥くんも連れてきてね。 同じ時間にね!」

ピン、と人差し指を立てて言う。 
わたしは適当に返事をして、日下部さんの研究所を出た。

◇   ◇   ◇

【超能力者】。

よくスプーンを曲げたりだとか、瞬間移動だとか。
普通の人ならそういうのを想像するだろう。

だが、わたしたちは違う。
それぞれ一つの能力を持つのだ。

たとえば、わたし。 泉心音。

わたしの能力は────【絶対】。

世界に存在するもの、運命でさえ絶対にする能力。
だからわたしは、【絶対少女】。