ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 絶対少女!! ( No.83 )
- 日時: 2010/05/24 20:42
- 名前: ユエ (ID: 4to6kJuE)
はやく、はやく、はやくはやくはやくはやく!
───早く帰ってきてよ、お姉ぇ。
ちゃんと約束どおり、待ってるから。
私ハココニイルヨ!
はやく帰ってこないと、私は不安でいっぱいになる。
“想像”されたものであるから、存在しないんじゃないか。
その言葉で、苦しくなるよ……。
◇ ◇ ◇
「エリカさん……?」
素晴らしい庭園で絵を描いているエリカさんに、声をかける。
ちなみにりあむは部屋に置いてきた。
エリカさんは振り返らずに、
「海雪のことでしょう」
と透き通った声で言う。 流石です、エリカさん。
エリカさんは手の動きを止める。
(屋敷から見える海の風景を描いている様子だった。)
ようやく振り返り、紅い瞳でわたしを見る。
「あの子も色々あるのよ、としか言えないわ……」
「やっぱり、そうですか」
「……絶対に自分のことを話そうとしないから………」
ふわっと風が吹き、まわりの花が揺れた。
そして、はらりと何枚かの花びらが舞う……。
───あ、この花びら。
さっき図書室で見た花びらだ!
「ん? 心音、花に興味でもあったかしら……?」
「え、エリカさんっ。 この花……っ」
「それはね、ミヤコワスレっていう花よ。
ここではピンクしかないけど、他にも紫や白色もあるわ。
───たしか、海雪が大切に育てているのよ。
庭園は海雪が管理する場所じゃないんだけどね。
どうしても、って。
どうしても、ミヤコワスレだけは、って言うから」
ミヤコワスレ、っていうんだ……。
でも、花と海雪ちゃんに何の関係が?
謎は深まるばかり、だよ。
◇ ◇ ◇
〜♪〜♪〜♪
突然、わたしの携帯がなりはじめた。
部屋へと向かう廊下の端っこに止まり、確認する。
───あ、時雨だ!
「もしもし、時雨?! 久し振りっ」
(久し振りですね、心音ちゃん。 楽しいですか?)
懐かしい? 時雨の声がする。
「うん、すごく豪華すぎてね困っちゃうけど……」
楽しそうに笑う時雨の声がする。
後ろからは、飛鳥と日下部さんの声がちらほらしてくる。
きっと、研究所にいるんだろう。
(そういえば、りあむくんとはどうですか?)
「……りあむ? え、楽しくやってるけど……?」
(……………そうですか。 では、また電話しますね。
では、また今度)
プツン、と電話の切れる音がする。
時雨の長い沈黙は何だったのだろうか……。
ま、いいや。 時雨と喋れたわけだしっ!
「────貴方は鈍感なんだねぇ」
突然、背後から声がした。 りあむじゃない、心也くんじゃない。
でも聞いたことのあるような、少年の声。
「誰……ッ!」
わたしはすぐに振り返る。
そこには、口に棒つきキャンディーを銜えたりあむがいた。
───え、りあむ?
でも、りあむにしては冷たい瞳をしているような……?
「オレのこと忘れちゃったの? 哀しいな」
違う、こいつはりあむじゃないっ!
思い出したよ、【寒冷少年】のれおんって子だ!
この前、美羽と一緒に暴れまくったガキだ。
どうしてれおんがここに……?
「バトルするつもりは、まったくないからねぇ」
と言われたが、一応心構えはしておく。
「あの憎き兄貴は元気?」
「兄貴……? 誰のこと?」
れおんに兄なんて、いるのか?
すると、れおんは驚いた顔をする。
「あれっ、教えてもらってないのかなぁ?
───ま、知らないなら良いや」
それだけ言うと、スウッと姿を消した。
何だったの、あの子……?!
兄貴って誰のこと? 何をしに来たの?
でも、りあむにソックリだったよな。
右目の下にあるホクロと、冷たい瞳がなければ、完全にりあむだよ。
そろそろと、わたしはりあむの部屋へ戻った。