ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 闇夜の惨劇 ( No.60 )
日時: 2011/07/10 20:10
名前: 凛 ◆KM/REaTgCs (ID: VYCQ1KaR)

4*神社の向こう側

途中で妃恋たちと別れ、茜凪は寂れた神社の鳥居を潜った
神聖なる神社と魔界の住人である死神は相性が悪いように見えるが———別に茜凪は神社が嫌いではない。
魔界の住人らしくないかもしれないが、神社は大して害は無いのだ
鳥居の先を進み、拝殿の前を通り過ぎる。この神社は、恋黒市に数箇所ある神社の中で恐らく尤も人気の無い神社だろう
いや、神社とすら呼べないかもしれない。なぜなら此処は本当に小さな神社で、神主すら居ない寂れた神社なのだ

「まぁ、結構いい場所だとは思うのだが……これも、過去の影響か」

その拝殿を通り過ぎると、小さな抜け道がある
其処は森の中にある小道のようなものだが、その奥は巨大な桜の木で塞がっている
——— 一般人が見れば、だ

「解」

パキィン、と澄んだ高い音が響く
桜の木の幹の真ん中がひび割れ、人が通れる程度の穴が開いた
その奥こそが、彼女の住む『闇蝶の館』だった
といっても、館部分は端っこの方の狭い部分であり、殆どは館ではなく屋敷なのだが

「……名を『闇蝶の屋敷』にすべきだったな」

ポツリ、と呟いて穴を通ると自然の森と屋敷は見事に調和しているのが見て分かる
そこに庭も溶け込んでいるのだ
……全てをひっくるめて彼女の家なのだが

「さて……今日は魔界の情報を調べねばならないな。あと茶菓子の確認をして———どうせ、夜半にセルシェたちが来るだろう」

吸血鬼の性か、セルシェはよく夜中に遊びに来る
茜凪とて死神……魔界の者であり、即ち“夜”の種族である
夜には強いが、流石に限度というものがあるだろう
何せ、セルシェが来ると徹夜は当たり前なのだから

「……頭の痛い話だ」

屋敷に入ると、すぐに制服を脱ぎ捨てる
あんな暑いものをいつまでも着ている気は無い
髪を軽く払うと、着慣れた黒の着物に袖を通した