ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Mission〜ミッション〜(共同制作) ( No.114 )
日時: 2011/05/19 15:28
名前: きのこメイド (ID: C.IWX95H)
参照: http://loda.jp/kakiko/?id

第九話



どうして…?
どうして二人は無事なの…?
いやな汗をかきながら呆然と立つ私。すると歩行者専用の信号が点滅し始めた。
それも見えていない私。「あっまずい!」そういいながら憲君が私の手を引っ張った。
わたりきったころには丁度赤。自動車が進み始める。

「ふーっ間一髪☆」
「なにが☆だ。まずはこの状況を整理しろ。」
空気を和ませてくれる憲君。それに渇を入れる基貴君。その姿を見ていると、私は徐々に落ち着きをとりもどした。

「俺たち轢かれてないよな…?」
憲君がつぶやく。けれど私の目線からは確実に轢かれたように見えた。
「確かに無事だ…珠洲香。お前の目線からはどうだった?」
考えていた事をそのまま問われた。もちろん私はそのまま答えた。

「……」
流れる沈黙。居心地は悪く無かったが、基貴君の眉間のしわが矛盾への怒りを表している。

するとまたあの耳鳴り。点滅して見えるフラッシュバック。だが今日のものはいつもよりひどかった。
「うっ…ああっ!」
「!!大丈夫か!?」

よみがえるのはあいまいな記憶の中で歩いたあの道化の道。
なくした記憶のありかへと続く道。

私は二人を無視してその道をたどっていく。
「ちょっ…珠洲香どこ行くんだよ!」
「フラッシュバックが見えてるんだ。…ついていこう憲。」
疑問を持たずついてきてくれる二人。ただ少し、本物とは違う冷酷なまなざしを感じた。


               ————基貴&憲目線————

「見えてるんだな。ふらっしゅばっくが。」
「…あまり大きい声で言うな。聞こえる。」

憲が興味しんしんにずかずかと歩く。この道は不気味ですごい違和感がする。

「なぁ基貴。ほんとにこいつは珠洲香と関係あるのかな…」
ついさっきまでの自信とは裏腹に、憲はしょんぼりと言う。
「…いまさら引き返せないだろ。それに…俺はすこし仮説を思いついた。」
「どんなんだよ。」
「もしかして石夜珠洲香は—————…」



俺の仮説はこうだ。
俺たちのところでは珠洲香が車に轢かれたまま行方不明中。
その事を聞いた石夜珠洲香は驚き、動揺した。

何故動揺する必要があるのか。
確か自分にそっくりな友人が行方不明なのは疑問に思う。だが驚く必要は無いだろう。
そこで俺は考えた。もしかすると石夜珠洲香の近しい人も竹原と同様、行方不明になったんじゃないのか?
それなら少々驚きはあるだろう。

だがそれに追い討ちをかけ、俺たちとは逆の境遇で、俺たちじゃない俺たちが行方不明だとしたらどうだろう。
そうすればあの驚きようにはぴったり合う。
それに何故彼女はあの日、俺たちを知っているかのように俺たちの名前をつぶやいていたんだろう。
その疑問にも結びつく。


「——————…とまあこれが俺の仮説なんだが…」
「…ぽいな。」
憲もいつもとは間逆。真剣な瞳で俺の話に耳を傾けていた。
「この線で計画を進めていこう。そうすれば…」
「珠洲香が見つかるはず」
「…だな。」

俺たちは冷酷に彼女の背中を見つめる。
気持ち悪い。いなくなった親友にそっくりな女なんて。
それに仮説だが俺たちと逆にいる彼女。怪しすぎる。

俺はいらだった。今起きている矛盾だらけの世界に。
俺たちに起こらなくても良かったはずだ。




…そう言っても珠洲香は帰ってこないけれど。
ただ苛立ちをアスファルトに重くぶつけた。





————珠洲香目線————



気付けばフラッシュバックは消え、なぞの館にたどり着いた。
3人とも、何の根拠も無かったけれど、同じく手がかりも何一つ無いので、その館に足を踏み入れる。

                

               第九話END