ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Mission〜ミッション〜(共同制作) ( No.46 )
日時: 2010/10/29 20:36
名前: きのこめいど (ID: 0ZFQDflb)

第三話


落雷の音が私の頭の中をかきむしる。
かえしてかえして 私をかえして
きこえないの? 君は誰?
私は誰? ここどこ?
頭痛い…だめだ…割れそう…


「いっ!」
起きた場所はベットの上。
冷たい空気と…何これ?痛いと思ったら右手の甲に痣。寝ている間にぶつけたのだろうか…
それに、いやな夢を見た気がする。

大好きな二人が、目の前で惨殺される夢。

二人って誰だっけ…?
呆然としてる私。そこに「お母さん」がノックもせずに入ってきて、湯気が出てる朝食を置き、すぐ立ち去ろうとした。
あ、
そうだ、昨日の事、聞かなきゃ
そう思って声を出す。・・・え?

声が出ない。

今さっきは出たのに。
なに?これ…
「うグッ…あ゛ッ…えぇうブェっ」
息が出来なくなる
息ってどうやってするんだっけ?
いつの間にか一人になっていた冷たい部屋で、シーツをかきむしりながら悶える。
「ア゛ッ」
すっぱい液が逆流してくる。
意識と無意識の奔流に飲み込まれそうな自分の中、誰かが私を呼んだ。
あっちへ生きたい
曖昧な意識で私は願う。祈る。
なんだか分からないけど何かが私を待っている。
気づけば私はコートを羽織り、重いドアを思いっきり冷たく開けた。
「あら?どこかへ行くの?」
わざとらしく嫌味に引きとめようとする「お母さん」を無視して、私ははだしのまま、進もうとする足に身を任せて、意識の無いまま走った。
お母さんはそれ以上何も言わなかった。
当然だろう。記憶を失った娘なんて、出来れば近寄り難いものだもの。
どんどん速くなる。
そのたびにあざが痛む。軋む。
そんなのきにしないけど。
いつの間にか激しくなった息も、なんだか心地よかった。狂気におぼれて、陶酔で動いてる私の体。悪って何と聞かれたら幸せにおぼれるわたしと問うよ。それくらい私は今、浮かれてる。
意味の分からない曲が流れる私の頭。インプットされてる道筋は、まるで狂った道化の舞踏みたい。
湿気でぬれたまつ毛が瞳を潤わす。
足が止まったところはいつしか見た館。
門は開いていた。
軋んだ洋館はどこか懐かしさを漂わせていた。
段々くっきりしてきた意識。自分を取り戻した私は恐る恐る中へ入った。
何を無くしたって最初から私には何も無い。
そう思わせる顔つきで長い廊下を歩く。

どうしてだろう。この館から、私を感じる。
それは自分をなくした場所がここだから。

いつの間にか口に出た言葉。
自分が恐ろしくなった。
吐き気がする。
出ようとしたけどドアが開かない。
だしてよ、だしてよ、
叫んだ声は闇に融けていく。
広いところへ出た。そこには舞台があり、私がいた。
本物じゃない。影のような、どこか逆のところがある私。
私は訊いた。
「どうしたら出してくれるの?」
わたしは、
「大事なものを置いていけ。」

もう「私」は失いかけていた。
理性と、意識と、自分。






第三話、おわり☆