ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Mission〜ミッション〜(共同制作) ( No.80 )
- 日時: 2011/04/22 19:56
- 名前: きのこメイド (ID: C.IWX95H)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id
第五話
「それじゃあ転校生を紹介しよう。」
みんなが座り終わってから先生がそう言う。
黒髪のまじめそうな男の子と明るめな短髪のニコニコしている男の子は、それぞれ自分で黒板に名前を書き始めた。
「杉本憲でーす」とニコニコしてるほうが言うと、続けて「椙浦基貴です。」ともう一人のほうもまじめな顔で言った。
…ん?何か聞き覚えのあるような名前……
「二人とも家の事情で引っ越してきたんだが、みんな、仲良くしてやれよ!!」
おおらかな性格の先生は、そういいながら憲くんと基貴くんの背中をばんばん、とたたく。
「お前らの席はあいてる後ろの席、適当に座ってくれ。」
あらかじめ用意してあった二人の席は、私の後ろに二つ、仲良く並んでいた。
「よろしく〜」
「よろしく。」
二人は周りに挨拶していた。
そんな姿をぼーっと、見つめながら私は
「憲…基貴…」
「え?俺達の事知ってるのか?」
「えっ!?あっあのっ…」
ぽろっと口から出た言葉。憲くんに聞こえてしまったみたい。な、なんていおう…
「君、なまえは?」
「あっえと、石夜珠洲香です」
基貴くんにたずねられ、私はとっさに答えた。
すると二人は数秒疑問を浮かべた顔で見つめあい、それから憲くんが、
「へー実は俺達の幼馴染ですごく仲良かった奴と名前と見た目音味なんだよ!君!!」
「…え?」
私は驚いた顔で二人を見つめた。先生は私達の会話に気づかず、「名簿をわすれた!取りにいってくる」といって教室から出て行ってしまった。
そんな先生の姿を横目に流した基貴君が、
「名前は竹原珠洲香っていうんだけど…」
と、言いながら二人で暗い顔をした。
珠洲香…わたしと名前が同じ…それは偶然なのか必然なのか、そのときはまだわからなかった。
私はきになって聞いてみた。
「その…竹原珠洲香さんが…どうかしたの?」
二人はよりつらそうな顔をした。
少しの沈黙の後憲君が静かに話しはじめる。
「実は…珠洲香は今、行方不明なんだ…」
行方不明…?なぜかその言葉が引っかかった。
「えっ!?どうして…?」
とりあえず聞いた。
今度は基貴君が低い声で話す。
「行方不明になる直前に、俺達と珠洲香は公園で遊んでたんだ。その帰り道、横断歩道で赤信号が青信号に変わるときがスタートで、一番最初に向こう側にたどり着いた奴が勝ちっていう遊びをしたんだ。そしたら……珠洲香が…」
「珠洲香さんが?」
「………とまってたはずの車が急に走り出して、珠洲香が轢かれたんだ。」
「!!?…でもどうして行方不明…?」
「…俺達は珠洲香を助けようと思って道路を見たら…珠洲香の姿が跡形も無く消え去ってて…」
「…消え去る……?」
そ、そんなの…非現実…ありえない…
「ありえない話だけど…本当なんだ。」
「俺たちは今、珠洲香を探してる。」
「・・・」
少し胸騒ぎがした。と、同時に知らない記憶が少しよみがえって、頭の中に流れ出した。
『憲!!基貴!!いやああああああああああああああああ!!!』
ドンッ!!
『二人ともっ!!大丈っ……い…いない…?』
「—————————————————うぅっ!!」
激しいめまいと頭痛。それと記憶の断片。
「あっご…ごめん!!自分と同じ名前の奴が行方不明とかそんな話しちゃって…気分…悪くしたら…ごめん…」
憲くんが心配そうにあせる。
「あっ…大丈夫だよっ…見つかるといいね……」
作り笑いで言った。
「ありがとう。」
基貴君が返事を返す。暗い顔で。
「今日から…よろしく。基貴君、憲君。」
「こちらこそ。」
「あっああ…よろしく!!」
3人でうそ臭い笑顔で会話を終わらせた。
これでよかったんだろうか…よみがえった記憶に混ざっていた二人の存在…なによりも行方不明の「私」。
どうして私と二人で記憶が逆になっているんだろう。
見つけたい。その答えを。
それで「私」が取り戻せるなら。
五話END