ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- もがく、もがく、もがく、そのさきには ( No.4 )
- 日時: 2010/04/23 16:33
- 名前: 空色 (ID: WPWjN3c4)
——一章序章//少年の決意//——
少年は、独りだった。いつもいつも、独りだった。
親はいない。兄弟もいない。友達もいない。
自分を住まわせてくれるような人は、どこにもいない。
少年は、知っていた。自らが、どれだけ“異端”な存在であるかを。
だからこそ、自ら人に近づくような真似はしなかった。否、したくなかった。
もう、あの時の惨劇を繰り返さないために。あの時の悲しみを、味わいたくないがために。
少年は、泣いていた。ただただ、泣くことしかできなかったから。
泣くこと以外に暇つぶしをする方法を、見つけることができなかったから。
あの時の惨劇を思い出し、泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く。
別に食べることも風呂に入ることも必要としない少年は、その場で泣くことしかしなかった。
少年は、わかっていた。いくら自分を責めても泣いても後悔しても、過去は戻ってこない。
過去をいくら思い出し振り返り夢想に浸ろうとも、どうにもならないと。
けれど少年は、愚かだった。自分でもはっきりとわかっているほど、愚かだった。
だからこそ少年は、あの時の惨劇で自らが殺してしまった命を、ひたすらに思い出し続ける。
いつまでも、あの頃の幸せに溺れていたいがために。
少年は、生きていない。けれども、死んでもいない。
生きる目的や希望を失い、心は死んだ状態でありながら。
いっそ死にたいと願う少年の心臓は肉体は、無慈悲にも生き続けた。
少年は、嘲笑いはじめた。自らを、自らの全てを否定するかのように。
少年は、どうやったって自分は死ぬことができないことをしっかりと理解していた。
けれども少年は、死ぬことができないならばせいぜい生きようなどとは、微塵も思わなかった。
そして少年は、考えて考えてやっと一つの結論に辿り着いた。
自分が死ぬことができないのは、あの時の罪を償わなければいけないからだと。
それから少年は、決めた。決心した。誓った。
生きようと。それだけを思った。生きる。ただ、それだけを。
けれど少年は、他人に心を開くことができなかった。
あの時の惨劇で味わった悲しみを怒りを喪失感を情けなさを後悔を苦しみを絶望を感じたくないがために。
少年は、生きることをただ目標にした。何があっても、生き残ると。
少年は、人に心が開けなかった。生きようとは思ったが、自分だけで生きていこうと決めていた。
そんな少年はある日、“彼ら”と出会った。
——一章序章//終//——