ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Episode29 速い! ( No.106 )
- 日時: 2010/06/01 14:59
- 名前: 禰音 鏡幻 ◆Kaim8JsO5s (ID: cYSZrqDn)
「う゛〜ん……。で、指輪だっけ?外してくれ」
気が付いた湖流が何事も無かったかのように起き上がり、すぐさま指輪の話に戻す。
言われた通り、早速外そうとしたが、
太陽神殿でフレアとの契約時に付けた指輪が邪魔して外せない。
フレアの奴!今思えばこうなる事を見越してやってたのだろう、
何て読みの上手い奴だ!
「外せない場合はどうすればいい?」
「はぁ…?外せない場合か、コイツ外してから——…」
「無理、こっち外すと私が契約違反ってみなされて死ぬから」
「俺を誰だと思ってるんだ?」
湖流は直ぐに黒い手袋をはめると、フレアとの契約指輪を人差し指で軽く撫で、
いとも簡単に砕いてしまった。
……え!?
壊れたと言う事は、私は…死ぬのか……?
「契約の盲点を突いた。戦闘によって破壊されたと指輪に認識されれば君は死なない」
死なない?
それよりも、
契約の内容を見透かしたように指輪を破壊した湖流に驚きだ。
90歳近いジジイとは思えない対処の早さ、
亀の甲より年の功と言うのは伊達ではないらしい。
「んだからさぁ、言っただろ?」
「俺は永遠の20歳だっけ?」
「俺は永遠の20歳だって」
最初の所だけだが、2人の声が見事にはもった。
それを聞いて、湖流は少し満足そうにアリスの指輪を預かると、
地下室に閉じこもってしまった。
「楽しそうですね」
「!!」
それを見計らったかのようにシャルがアリスに話しかけた。
この部屋で2人で指輪の事であーだこーだ言っていた時に…?
そんなはずは無い、気配すらなかったし、
何より、入ってくるときにドアの音がするはず!
「……何時の間に?」
「最初からですよ、この家は私の手足みたいな物ですから」
そう言うと、壁に手を当て、同化して見せた。
なるほど、植物系魔人か、
それもかなりの上級者らしい。
ドンドン!
会話の合間にドアをノックする音が小屋に響く。
「君は隠れててください。私達を連れて行きたがっている政府の人間です」
「…え?」
バゴォォン!
小屋の戸が蹴り倒されでもしたのだろう、
部屋の中を轟音が駆け巡る。
そして音が止んで2秒後、
この部屋のドアの向こうに1人、
無線で何か会話をしているのが聞いて取れる。
何だか機械が喋っているかのような声だ。
『…え?メンドイ、パス。俺は狩りを楽しむから。んじゃあ、バイ』
無線を切ったのだろうか?
この部屋の戸がドンドン燃えていく。
『おッ!1匹目発見〜!』
「こっちも1匹侵入者を発見したかな?」
『威勢のいい奴だ、楽しませてくれよ?』
ドン!
会話の直後、部屋の中に何かが打ち付けられる様な音が響く。
その音の音源は、何処だ?
……私か!
「早いのね」
『ああ、早い。速くて速くてとても速い。正直制御が難しい』
「じゃあ、いい勝負が出来るかも?」
ドン!
今度は見えた。
今のは相手が地面を蹴り、アリスに向かってきた音。
向かってきた所から、相手はアリスを地面に叩きつける体勢に入り、
腕を掴み、一気に天井へ飛び、天井を蹴り加速、
そして叩きつけるわけだ。
しかし、天井を蹴って加速したのはアリスだ。
そのまま一気に地面へと叩きつけ、大ダメージは必須。
運が悪ければ死ぬだろう。
『良いね良いね!楽しくなってきた!』
「私は…君よりも速いよ?」