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Episode41  魔物 ( No.137 )
日時: 2010/06/12 15:00
名前: 禰音 鏡幻 ◆kaIJiHXrg2 (ID: cYSZrqDn)

『これより、被検体№6の捕獲と、亜麻色の海賊船船長及び部下の抹殺を開始します』


「無茶を言うな。貴様ごとき、2秒で消し去ってくれる」

「あれ?船長、メノウの口調が一気に変わりましたが、まさか暴走なんてことは無いでしょうね?」

そういえば言ってなかった。
メノウは通常は普通の男の子の様な性格だが、
いざ戦闘となり、臨戦態勢に入ったとたん、性格が一変、
ただの冷徹な殺人人形となるのだ。

「平気よ、暴走じゃなくて覚醒しただけだから」

「……覚醒…ですか」

『覚醒後、戦闘力の飛躍的上昇を確認、リミッターを解除します』

流石はバイオウェポン、
機械と違い、殺気が辺りに充満するのをわずかに感じる。
しかし、メノウの殺気には遠く及ばない、
恐らく感情は、殺意と敬意しか無いのだろう。

「リミッターを解除したか、素晴らしいが、我輩には遠く及ばない」

『そうですか?殺気が戦闘力に反映される事はありません』

バゴッ!

奴が動いた。
地面の力強く蹴り、一気に距離をつめる!
そしてカウンターを掛けたメノウの攻撃を読んでいたかのように避け、肩に手を掛け後ろへ回り込むと、
そのまま一気に腕を突刺した!

「……グッ!早いな。パワーも我輩とは段違い」

『私には貴方では勝てません』

「2人居たら?」

アリスが隙を突き奴との距離を縮め、
剣で斬り付ける!

『こんな低俗な攻撃が私に効くとでも思ったのですか?私は剣による攻撃は一切受け付けませんよ?』

言葉を続けながらメノウに再び腕を突刺す。
何度も…何度も!
……いい加減にして置けよ?
……私は気が長い師匠と違って、気が短いぞ?

「……」

『何ですか?』

「止めろって言ってるんだよ、このくず鉄の寄せ集めがァッ!」

アリスは咆哮と共にそいつに突っ込む。
剣が効かないのは分かった、打撃はどうだ?
そんな事を考えてか考えずか、
とてつもない威力の鉄拳が奴目掛けて振り下ろされる。

……ドプン!

ドプン?
殴った、私は確かにこいつを殴った。
しかし手ごたえが殆ど無い!
何故——…!
コイツ!液体金属か!

「このッ!畜生がァッ!」

何度も何度も殴り続けるが、効果が無い。

『言いましたよね?私には効果が無いと』

「吹っ飛べ!ヒート・ショット!」

今度は熱による攻撃!どうだ!
金属ならひとたまりも——…
効いて…無い?
何故だ!? 何故!

「バーストォッ!」

今度は内側から爆発させる!

『ですから、私は貴方では殺せません。私にも貴方は殺せませんので、応戦部隊の要請を出しました』

ドゴォォオォォォン!

遥か上から轟音がビル全体を駆け巡る。
その爆音で、一気にオーバーヒートしたアリスの頭が冷える。


「やっと魔物連れてお出ましですか、ししょー」