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Episode15  指名手配 ( No.83 )
日時: 2010/05/24 20:20
名前: 禰音 鏡幻 ◆akHvV3kiSo (ID: cYSZrqDn)

「う゛…」
「あ〜…、目覚ました?」

ベッドの上でヴァムの手が空を掻く。
それを見計らったようにその部屋のドアが鈍い音を立て、
外界と部屋を繋ぐ。

「目が覚めたか、良かったな綿埃君」
「…フン、綿埃か。俺には丁度いい呼び名かもしれないな」
「その様ね」

ヴァムが自分の体を見て驚く。
驚く原因は大概、骨折など、相場が決まっているが、
今回はそれより深刻で、それよりも簡単なことだった。
しかし、そんな事を無視して話を続ける。

「あんたさあ、何者?」
「君も名乗るべきだと思うが?俺はヴァム・ノクターンし…」
「ああ、あの海賊か。私は紅 冷嘉」
「ああ、あの殺人鬼か。何故…この世界に居る?」
「この世界?ああ、指名手配の話はこっちまで広まってるの?困ったな、広めた奴は殺さなきゃ」
「この世界で君の罪を知っている者は5人と居ない、安心しろ。で、どうやって向こうの世界からこっちの世界に来た?」

さっきから話がまったく見えない。
否、見えないのではない事情が分からないのだ。
情報が少なすぎる、どうにかして調達せねば…。

「さっきからさぁ、何の話してるの?」
「お前には関係ない」
「言うな、知らないのなら教えるだけだ。こいつ、紅 零嘉は、この世界とは根本的に違う、生命エネルギー主体の世界の人間。つまり、パラレルワールドの人間だ。お前なら知っていると思ったんだが」
「お前なら知っている?」

その言葉が頭に引っかかる。
他の話などどうでもいい、
知っているだろうと考えた理由の方が今の私には先にすべきだ。

「ッたく、相変わらずカンが良い…。お前さ、自分の名前の由来って、考えた事あるか?」