ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ハジマリ ( No.1 )
- 日時: 2010/05/04 12:41
- 名前: 由愛 (ID: L6rZBPa0)
第一章 Snow White×Noah —白雪姫×ノア—
ここは、どこかで見たことがあるような不思議な森の中。
辺りは薄暗く、空は真っ赤な色で染められていた。
そんな森の中を、一人の少年が一つの方角の方に突き進んでいた。
少年は、身長の小さい、可愛らしい者だった。
髪は綺麗な銀色で、肩のところで切りそろえられている。
そんな少年が、怪しげな黒のコートに身を包んでいるのは、見るものに少し矛盾を感じさせる。
その少年の肩の上には、先ほどから小言を嘆いている小さいリスが乗っかっていた。
その小言の内容はというと、腹が減った、もう疲れたなど、少年を困惑させるようなことばかりなのだが、
少年の耳には全く聞こえていないようだ。
この二人は、少し前にこの世界に来たばかりの旅人だ。
少年の名はノア。
彼は、自分の正体、並びに自分の本当の名を知らない。
ノアという名前は、自分で勝手につけたものだ。
そして、この世界の名前は「world of the snow」。
簡単に言うと、白雪の世界。
そう、ここは童話の世界。
童話の人物だけが暮らす、人間にとって未知の異界。
童話の話によって、それぞれ個々の世界があり、童話の人物達はそこで話を紡いでいるのだ。
当然、ノアもなにかの童話の人物と考えるのが妥当であろう。
しかし、ノアは違う。
ノアは、どの童話の物語にも該当しない、いわば特殊な人物。
ノアは、全ての童話の話を記録するために生まれてきた。
彼にとって、それが自分の唯一の生き方、そして使命なのだ。
この気持ちは、物心ついたときには既に備わっていた。
自分の目で童話の世界を確かめ、それを自分の持っている「Book」に書き表す。
そうすることで、ノアは生きてきた。
ちなみに、ノアの肩に乗っているのはラークというシマリスで、これはどこかの世界でノアが拾ったただのある童話の人物だ。
今はノアと共に、童話の世界を渡り歩いている。
今回二人がやってきたのは、この世界の名前の通り、グリム童話に出てくる「白雪姫」の世界。
ここでノアは、Bookに新しい文字を紡いでいくのだ。