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Re: SURVIVAL GAME  ( No.105 )
日時: 2010/05/14 21:52
名前: いち ◆mBjthR0pMA (ID: PmZsycN0)

STAGE ⅩⅡ  「逆転」

ついに、壁が大きく割れた。

ものすごい勢いで海水が流れ込んでいる。

「秋夜! ボートに空気が入っタ! 早く乗レ!」

俺は急いでボートに乗り込んだ。

「一体、何するつもりなんだ?」

籐梅が心配そうに言う。

「大丈夫。俺に任せろ、必ず5チームに勝てる」

「秋夜がそういうなら……」

籐梅は納得したようだ。

海水はすでに部屋の4割を埋め尽くしている。

だが、まだ海水が足りない、もっと、溜まるまで待たなければならない。

「あ、あの……本当に大丈夫、ですよね?」

蚯蚓が泣きそうな顔で聞いてくる。

「いいから、じっとしてるンダ!」

麗鈴が鋭く言った。

黙ったのを見て、俺はボートを扉の前に移動させた。

海水は、部屋の半分以上を占める。

「なあ、このままじゃヤバいんじゃナイカ?」

麗鈴もさすがに不安の色を隠せない。

「いいから、俺の信じて待てばいい」

俺はそれだけ言うと、ボートが流されないようにすることだけに集中する。

いよいよ、水位が上がり、天上に頭がぶつかるかというところまで来た。

「お。おい!」

「うわわわわ!」

「きゃあ!?」

もう限界だ……!!

「今だ!」

俺は日本刀を突っ込んでボタンを押した。

扉が水圧で壊れる(先ほどドリルで耐久性を弱めておいた)と同時に、尋常じゃない海水が一気に押し流される。

そして、ボートもその勢いに乗って部屋を飛び出す—









「な、何だこれは!?」

永世の絶叫が聞こえた。

「落ち着け! 凍らせればいいだろ!」

銃を持った男が指示を出す。

「そ、そうか!!」

永世は冷凍ガスをおそらくフルパワーで放出した。

が………









「凍らない!?」

海水は勢いそのままに5チームに迫る。

そして、あっという間に、5チームを飲み込んだ。

「くそおおおおお! 何でだあああああ!!!」

永世の叫びと共に、5チームは流されていった。













「そりゃそうだ、塩分を含む海水は凍らないからな」

俺は、はなむけの言葉の変わりに、つぶやいた。

そして、そのまま流れに乗って洞窟の外に脱出した。







無事に、乗り切れたようだ。

「くそ、秋夜! お前は天才ダ!」

麗鈴は嬉しそうに大声で言った。

他の2人も大笑いしている。

もちろん、俺も大笑いした。

「あははははは!! まさかこんなに上手くいくとはな、驚きだ!」

しばらく俺たちはボートの上で笑い転げた。




そして俺が、何気なく洞窟のほうへ目をやると…








「ダメじゃないか、秋夜、開けた穴はふさがないと」


急に、洞窟の入り口が崩れ落ちて、海水が止まった。



だが、俺はそれを成し遂げた人物を見て戦慄する。


「あ、あんたは……!」


「覚えててくれたかい? そう、私だ」




「何者ダ?」

麗鈴が警戒しながら小声で言う。

俺は諦めたように首を振りながら言った。










「あの人は、【鬼】俺たちではとても勝てる相手じゃない」



残り72チーム