ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: SURVIVAL GAME ( No.111 )
- 日時: 2010/05/15 22:46
- 名前: いち ◆GVslyoVS2Y (ID: PmZsycN0)
STAGE ⅩⅢ
まさか、こんなところに、よりにもよって鬼がいたなんて。
最悪だ。
まず、俺がいくら知恵をまわしたところで勝てる相手じゃない。
あの人は、見た目は普通の女だけど、実際は神にも劣らない戦闘力を持っている。
要するに、次元が違う。
だから、ここで俺が取れる最善の策は—
「麗鈴、2人を連れて逃げろ」
せめて、14チームを逃がすことだ。
「ここでお前1人おいていけトデモ?」
麗鈴がすかさず反論する。
「お前達がいたら、かえって邪魔だ。全員生き残るためには、お前達に逃げてもらうのが1番だ。悪いが、全員をかばいながら逃げ切れる相手じゃないからな」
「……ソウカ、じゃあ、俺達は行く。元気デナ。死んだら承知しないゾ」
「ああ、そっちも、気をつけろよ」
「アア」
麗鈴は2人を連れて逃げていった。
「あんたの相手は俺だ。間違っても、あの連中を追いかけようなんて考えるなよ」
俺は日本刀を構えて、一歩、鬼に近づく。
「ちょっと待ちなよ。何も戦う気はない。裏で友達だった仲だろう?」
そう。俺は鬼を知っている。
「あんたは友達なんかじゃない」
俺は日本刀を納めて振り向いた。
「せっかちだね、相変わらず」
一瞬で、鬼が俺の前に移動する。
「少し話そうよ、秋夜。君にも色々聴きたいことがある」
「あんたと話すことなんて何も無い。そこをどいてくれ」
「……君の母親のことなら、すまないと思っている」
「母さんの話を、俺の前で2度とするな」
俺は日本刀を抜きながら言う。
「いいから、私の話を聞いてくれ、秋夜」
「聞く気は—ない!!」
俺は当たらないのを承知で日本刀で鬼に切りかかった。
予想通り、日本刀を振り降ろす前に、鬼は視界から消えた。
それを確認して、俺は走り出した。
鬼は、瞬間移動すると、必ず後ろにまわる癖がある。
だから、不意をついて、逃げ出した。
いや、正確には、逃げ出そうとした…
鬼はとっくに、前に回り込んできた。
「やっぱり、その頭脳は健在だね。私でも君には頭脳では敵わない」
俺は小さく舌打ちして、日本刀を納めた。
「話って?」
「やっとその気になってくれたか」
鬼が俺の手をつかんだ。
「何を—」
「君の仲間のところさ」
俺はもう1つ思い出す。
鬼の瞬間移動は、鬼が直接触れていれば、他の人間も連れて行くことが出来るということを。
気付けば、目の前に真理奈と辻の顔があった。
横になっているところを見ると、どうやら俺は移動のショックで気絶したらしい。
「大丈夫? 秋夜」
真理奈が心配そうに言った。
辻も心配そうに俺の顔を覗き込む。
「ああ、問題ない」
俺は体を起こしながら言った。
「君の仲間には事情を話した」
鬼の声がどこからか聞こえる。
後ろだ。
正座した膝の位置は、さっきまで俺の頭があったところ、ということは……
「……あんたの膝枕とは、ぞっとするね」
「いいだろう? これでも恥じらい多き乙女なんだよ」
鬼がぬけぬけと言ってのけた。
「少なくとも、俺にはそうは見えないね」
俺はため息をついた。
「ははは、そうか」
こうして話している分には、普通の女なんだ、鬼という、本名も分らないやつは。
だが、俺は見た。こいつは、心まで、名前と同じく鬼であるという決定的な証拠を。
絶対に、油断してはいけない。
気を抜けば、即俺達77チームは終わる。
俺は鬼の顔を、じっと見つめながら、あることに気付いた。
「おい、仲間は?」
「ミーナと、天のことか? あいつらならば置いてきた。勿論何も言わずにな」
「……そうですか」
かわいそうに。俺は鬼のチームメイトに同情した。
鬼には、常に傍にいる2人の人間がいる。
1人は、ミーナ・アラストルという女だ。
鬼の弟子で、相当強い。鬼ほどではないが、間違いなくいたら最も戦いたくない部類の人間だろう。
同じことが、もう1人、天上天下唯我独尊にも言えるだろう。
もちろん、これは偽名だ。だが、俺は本名を知らない。
あまりに長いので、鬼やミーナは略称として、天で通している。
こいつもこいつで、むちゃくちゃな強さを誇っている。
ちなみに、こいつらには自前の武器がある。宝箱の武器は、必要なかったはずだ。
「すまないが、秋夜、2人を連れてきてくれないか?」
「はい?」
自分で行けばいいだろう。瞬間移動使って。
それを読み取ったらしく、鬼は
「この2人に、いろいろと教えなきゃならないことがあるからさ、頼むよ」
といいながら、言った。
俺は一瞬考え込んだ後。
「場所は?」
「さっきの洞窟の約700メートル北の大きい木の下だ」
「分った」
はあ、またあの2人に合わないといけないのか…