ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: SURVIVAL GAME  ( No.137 )
日時: 2010/05/19 22:24
名前: いち ◆GVslyoVS2Y (ID: PmZsycN0)

STAGEⅩⅥ

「はは! 君があの遠野秋夜君かあ! 君にやられた人たち、悔しがってたよ!」

デカバサミを持った女、月影京が、走りながら言う。

「そうかい、そりゃ光栄だ!」

俺は日本刀で斬りかかる。

月影はハサミを広げて受け止める。

金属音が、響く。

「ははは! やるねえ、頭だけじゃないんだ!」

「おしゃべりは嫌いなんだ」

すばやく体制を整え、次の一撃を放つ。

月影は、今度はかわして逆にハサミを突き出す。

切っ先が、服をかすめる。

「反射神経も、まあまあかな?」

まるで、戦いを楽しんでいるかのようだ。

「でも、最後に勝つのは、わ、た、し!!」

どうして俺はこんな腐ったやつらにしか出くわさないんだろう…俺は、ため息をつきながら言った。

「みーんな、俺に勝つっていうんだよね、誰1人として俺に勝ってないけど」

「はっはははは!! そうこなくっちゃ、つまんないよ!」

再び、日本刀とデカバサミが金属音をたてる—









私の相手、仁杜英智は、レアウエポン「サンダーソード」を所持している。

刀身に電流が流れていて、触っただけで致命傷だ。

だから、私の武器、「レイピア・アラストル」での近接戦闘は危険だ。

師匠も言っていた。

「相手を見ろ、良く考え、戦うんだ」

だから、私は考える。

こいつには、「機関銃・ミーナ」による遠距離攻撃が有効だ、ということを

私は正面から突っ込んでくる仁杜をジャンプでかわし、引き金を引く。

が、この攻撃を予測していたのか、仁杜はすでに横に移動して弾道からそれていた。

舌打ちしながら着地する。

「君のデタラメな身体能力にはあきれるよ、だが、僕は君の動きをすでに見切っている。君は僕に勝つことは出来ない」

仁杜は薄ら笑いすら浮かべる余裕があるようだ。

「それは、どうかしら」

機関銃を乱射しながら、私は仁杜に向かって走る。

だが、仁杜は巧みに木の陰を使って移動するため、なかなか当たらない。

それどころか、私に近づいてくる気配すらある。

よほど、自分の力に自信があるのだろうか。

「……ナメられたもんね」

仁杜が後ろから迫ってくる。

私は、機関銃を捨て、レイピアを捨てた。

「賢いね、降参かい? でも、僕は君を殺さなきゃならないから—

「黙って」

私はすばやく振り向き、地面すれすれまで身をかがめて仁杜に突進した。

「速い!?」

仁杜は、あわてて逃げようとしたが、もう遅い。

「貴様などに、私の動きは見切れない」

それが、仁杜に向けた最後の言葉だった。

「ぐはああ!!」

渾身の回し蹴りを喰らった仁杜は、はるか遠くまで飛んでいった。

「相手が悪かったわね」

私はゆっくりと振り向く。










ったく、俺に雷君を押し付けるとは、ミーナも秋夜も、優しさがないな…

まあ、戦略上、俺が雷君の相手をするのは分りきったことだったけどね。

「君、天上天下唯我独尊だっけ? よくそんなアホな名前付けられるよね。バカじゃない?」

「うるせえ。てめえに言われる筋合いなんてねえよ」

俺は、日本刀「天上天下唯我独尊」を構えた。

奥の手は、まだ使うのは早い。

「それにしても、雷を操るとはな、一体どんな武器だ?」

「あー、やっぱり気になる? 教えてあげるよ、これさ」

そう言って雷君はブレスレットのようなものを俺に見せてきた。

「サンダーコールっていうんだってさ。これで自由に雷を操れるんだ、しかも—

雨が、ぽつりと降ってきた。

「俺は生まれながらの超雨男。雷との相性はバツグンさ」

「なんて暗い特技なんだ…」

遠足では、さぞかし迷惑をかけただろうな…

「まあ、いいや。始めるぞっ!!」

そういうと同時に、雷が落ちてくる。

俺は、横っ飛びでかわした。

「ほらほらほら! どこまでかわせるのかな!?」

連続で雷が落ちてくる。

俺は横に移動し続けてかわした。

そうして、雷君の後ろに回りこんだ瞬間、走り出した。

「!? くそっ!」

雷が落ちてくる。だが、俺の動きの方が早かった。

「ははは! でも俺の雷の方が早い!」

「どうかな」

俺は日本刀を空中に投げて、パンチの姿勢を作る。

「は? 腕でも伸びんの? 届くかよ!」

「届くんだよ」

そのまま右ストレートを繰り出す。

そして、雷君は吹っ飛ばされた。

「がはっ!! ……まさかあ!」

「俺さあ、パンチが空中を飛んでくんだよね」

ま、1対1じゃ、俺には勝てねえさ…













横を見ると、ミーナと天上天下唯我独尊は既に戦闘が終わってるようだ。

俺も、はやく片付けなきゃな。

「く……英智も鷺丸もやられるなんて…!」

わずかに、月影にあせりの色が見える。

だんだん、攻撃の回数が減っている。

もう少しだ…!

だが、そのとき…

「鷺丸! 京! 今だ!」

仁杜とかいう男が、叫んだ。

月影が、デカバサミを投げる。

俺は、それを日本刀で受け止める。

そして、そのデカバサミに—















雷が落ちた。

当然、それは俺の日本刀に伝わり、そして—!!

「ぐあああああああああああああ!!!」

全身を、たとえがたいショックが貫いた。

「あ……秋夜あああああっ!!」

ミーナの絶叫が、最後に聞こえた音だった…