ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: SURVIVAL GAME ( No.212 )
- 日時: 2010/07/26 22:54
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
STAGE Ⅷ 「暗殺の両刃」
「バカな…石切が2人いる…!?」
一体これはどういうことなんだ。
『えへへ、さすがの秋夜君でも訳分かんないよね〜』
2人の石切は完璧にタイミングを合わせてしゃべりだす。
「……お前が双子じゃないなら、レアウエポンだろう?」
石切は、クスリと笑うと、またも同時にしゃべりだす。
『ま、秋夜君ならそれくらいは見抜くよね〜? さっきの爆弾魔の能力も見抜いてたし〜、今度は私たちの能力を暴いてみて?』
そういって、一歩、こちらへ踏み出す。
「なるほど……じゃ、遠慮なく、いかせてもらう!! 刃桜!」
無数の刃桜が石切を包み込む。
『またその技? さっき破られたの見てなかった?』
2人の石切は、剣で肩をぽんぽんと叩く。その仕草までもがまったく同時のタイミングだ。
「さあて…そいつはどうかな…?」
俺は刃桜を一箇所に集める。
刃桜は渦を巻き、やがて螺旋を描く槍となる—!!
「螺旋乱舞!」
狙いは、ただ一箇所。
螺旋乱舞は、狙い通りのところに突き刺さる。
が—
『残念♪』
「何ぃ…!?」
信じがたいことに、石切は螺旋乱舞を正面から受け止め、受け流した。
『だから、この技じゃ無理って言ったでしょ?』
「く……」
『じゃあ、今度はこっちから仕掛けちゃおうかな』
そういうと、石切は左右に分かれて森の中へ飛んだ。
森の中から、石切の声が響いてくる。
(あははは…私のもう一つの能力、忘れてないよね?)
「もうひとつ…!?」
(そう…暗殺者の能力だよ♪)
「…! あれか!!」
確か、石切は、一切の気配や足音を消して移動できる「暗殺者」だ。
(まあ、私たちに気付いたときは秋夜君が死んじゃうときかもしれないけど…♪)
「笑えない冗談だ…」
とにかく、どの方向から来てもいいように備えるしかない。
姿勢を落とし、滅華を構える。
(さすがにスキがないね、秋夜君)
くそ、声はどこから響く…!?
と、その瞬間—
『あは♪』
「!!!」
振り向いたときには、すでに2本の剣が俺の腕を貫いた後だった。
「ぐあああああああああ!!!」
あまりの激痛にのた打ち回ることしか出来ない。
利き腕じゃない左腕をやられたのが唯一の救いか。
『ああ…秋夜君の悲鳴…ゾクゾクするよぉ…』
「……くそ、変態が…」
やっと俺は立ち上がるが、左腕はもうほぼ機能しない。
『痛々しい…ああ、その苦しそうな顔…もっと、もっと、もっと…見せてぇ♪』
そういうと同時に動き出し、今度は右足を狙ってくる。
突き刺されるまではいかなかったが、それでも石切はしっかりと俺の右足を切り裂いていった。
「っぐ、ああ……」
これで移動にも支障が出る。
『あははは、楽しいなぁ♪』
再び2人一緒のままで、ゆっくりと俺に近づいてくる。
「……ん?」
俺は、その姿に違和感を覚えた。
何か、足が……?
今、こんなことを暴いても、どうにもならない気もするが…
いや、でもきっと重要なことだ。
『どうしたの? 急に黙っちゃって?』
俺は無視して、思考を続ける。
冷静になって考えてみれば、おかしい点はいくつもあった。
ヤツは、なんで動く時はいつも一緒なんだろうか?
2人いるなら、別々に動いたほうが絶対にいいはずなのに…
それなら、俺はとっくに死んでいただろう。
それができるなら、石切もそうするはず。
何故それをしなかったか? 簡単だ。出来なかったからだ。
じゃあ、何で出来なかった…?
『だから…どうしちゃったの? いい加減返事してよ?』
—それは、こいつの技は分身とは少し違うものだから。
その瞬間、俺の頭の中で驚くほど早く考えがまとまる。
疑問が、一気に晴れていく。
『もう、答えないならいいよ。死んで』
2本の剣が、同時に振り下ろされる。
それを
俺は
1本の剣で
受け止める。
2本の剣が一瞬重なる、その位置で。
「悪いな、全て読ませてもらったぜ」
『……!?』
今、全ての謎が解けた………!!
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