ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: SURVIVAL GAME 能力当てクイズ開催w ( No.221 )
- 日時: 2010/08/01 16:15
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
SIDE STORY① 「強くなりたい」
「真理奈って役立たずだよな〜」
冗談半分で言った友達の言葉。
その言葉が、なぜか忘れることができない。
多分、それはその通りだから。
勉強はできなかったし、人付き合いも悪かった。
当然彼氏なんてできるはずもなく、イマドキの若者とは程遠かった。
だから、私はそんな自分が大嫌いだった—
「この辺だね…嵐があった場所は」
「うん、そうだね」
私と、私のパートナーのミーナ・アラストルは森の中に立っている。
どうしてこの森にいるのかというと、昨日私たちは今いる辺りで桜色の嵐が吹き荒れるのを見たから。
もちろん、ただ嵐が吹き荒れただけなら私たちはここには来ない。
この島にはレアウエポンを使ってこの世の技とは思えないことをしてくる人もいるから、別に嵐を起こしたって不思議は無いしね。
でも、その桜色の嵐は、起こした人に心当たりがあった。
もちろん。その人は私たちのリーダー、遠野秋夜だ。
情報を集めることに徹するはずだったのに、よりにもよって秋夜があんな目立つ技を使うという事は、よほどのことがあったに違いない。
そう考えた私たちは様子を見に行くことにした。
「……! こいつは派手にやったね」
「う、うわぁ……木がボロボロ」
嵐があった辺りの場所の木は、全部何かに切り刻まれている。
「これはいよいよ間違いない。秋夜だ」
「やっぱり、刃桜だったんだね…」
しかし、肝心の秋夜がいない。
しばらく周りを探してみたけど、見つからない。
「もしかしたら、誰かに連れ去られたのかも…?」
ミーナが、暗い顔で言う。
「大丈夫だよ、ミーナ。秋夜のことだから、勝ってもうどこかにいっちゃったんだよ!」
「そうか……そうだな、真理奈の言うとおりだ」
ミーナは不器用に笑いながら言った。
「そうそう! ……で、これからどうしようか?」
私も笑顔で返す。
「そうだな—
「おやおや、お嬢ちゃんたち、2人だけでどうしたんだい?」
後ろから、声がした。
「……何者だ」
ミーナが、レイピアを構えながら言う。
私はこわばった顔で声をかけてきた男の顔を見つめている。
「おっと、そんな怖い顔しなさんな。俺たちゃ…あんたらの命がほしいだけだ!!!」
そういって男は銃を取り出した。
そしてそれを私に向ける。
「……!!」
私は怖くて動けなかった。
そして目をつぶった、その瞬間—
「でやあっ!」
「うぐあっ!!」
ミーナの声と、男の悲鳴が聞えてきた。
「……?」
私が恐る恐る顔を上げると、男が肩を抑えながら立ち去っていくのがみえた。
「大丈夫?」
ミーナが、手を差し伸べてくれる。
「うん……ありがと…大丈夫」
何も出来なかった。
悔しくて、泣いてしまいそうだった。
心の中で抑えていたつもりだったけど、顔に出てしまたみたいで、ミーナが顔を覗き込んできた。
「どうかした……?」
「……私、また役立たずだったね…」
「え?」
「私っていつもそうだよね。小さい頃からずっとなんだ。誰の役にも立てない。迷惑ばっかりかけてる。今だって……ミーナがいなかったら私死んでたっ…」
涙があふれてくるのが分かった。
しまいには、大声を上げて号泣してしまう。
きっとミーナのことだから、大声を上げると危ないから落ち着いて、とか言うんだろうなと思っていたけど、実際は—
「……?」
優しく、ミーナが私を抱きしめていた。
「大丈夫、真理奈は役立たずなんかじゃない」
「……え?」
「私も、真理奈みたいに、自分は役立たずだって思ってたときもあった」
ミーナが? あんなに強いのに?
「最初に、師匠にあったころ……私はまだたったの6歳だった。そのころは、私は両親が事故で死んじゃった、住む家もなくて……泥棒をしてなんとか生きてた。でもある日、今まで見逃してくれてた警察も動き出して…私は追われる身になった」
「ミーナ……そんなことが…?」
「そう。あのころの私は、自分なんかちっとも大切になんか思っていなかった。所詮、親がいなければ何も出来ない人間なんだって、そう思ってた…」
「………」
「警察から逃げるのも疲れて、もう死んじゃおうかなって思ったとき、私は師匠に会った」
ミーナは、懐かしそうな顔で言う。
「師匠は私を見て、一緒に来てって言ってくれた。行く当てもなかったし、何より師匠の暖かさに惹かれて、私はその日から師匠の弟子になった」
「そうなんだ……」
なおも私を抱きしめたまま、ミーナは言う。
「師匠は、何でも私の話を聞いてくれた。私は、何もかも、全て話した。そしたらね…師匠が、今私がやってるみたいに抱きしめてきて、こう言ったの」
『大丈夫、ミーナは役立たずなんかじゃない。ミーナにはミーナにしか出来ないことがある。それを探せばいいんだよ? 私も手伝うから、ミーナにしかできないことを探そうよ』
「この言葉を聴いて、私は涙が止まらなかった。子供ながら、この人に一生ついていこうと誓ったよ」
「……私にも、私にしか出来ないこと、あるのかな…?」
私は、その答えがどうしても、知りたかった。
「あるよ。真理奈にしか出来ないこと。きっとある、宣言する。だから、もう泣かないで。私も、まり何しか出来ないこと探すの、手伝うから…」
「うん……ありがと…ありがと…」
私は、ミーナの胸でこれでもかってぐらいに泣いた。
多分、人生で1番泣いた瞬間だったと思う。
しばらく泣き続けて、私は涙をぬぐうと、立ち上がり—
「よう、お嬢ちゃんたち、まだここにいたのか?」
「……あんたは」
ミーナが再びレイピアを構える。
先程の男だ。
肩に包帯を巻いている。
「あんたが強いのはよく分かった。まともにやっては勝ち目は無いから、ちょいと卑怯な技使わせてもらうぜ」
そういって、男が指を鳴らした瞬間。
私は急に誰かに腕をつかまれた。
「な、何!?」
「な………真理奈!!」
いつの間にか、10人ほどの男達が私たちを囲んでいた。
そのうちの1人に、私は捕まってしまった。
「さて、強いお嬢ちゃん……か弱いお嬢ちゃんがどうなっても構わないのかな?」
「くっ……」
ミーナは、レイピアと機関銃を捨てた。