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Re: SURVIVAL GAME 番外編なう ( No.239 )
日時: 2010/08/04 17:10
名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)

SIDE STORY② 「島に住む人」

「どえええええええええ!?」

辻健太、只今「モンスター」に追われています。

なんて実況してるヒマなんかない。

「つーか……なんでこんなのが実在するんだよ!!」

今俺を追ってきているのは、頭が3つある化け犬。

まあ、手っ取り早く言えば、ケルベロスってやつだ。

「ガウ!」

「うわ!?」

しかも口から炎を吐いてきやがる。

「ドチクショーが……ダメだ、戦うしかねえ」

俺はくるっとケルベロスに向き直ると、首飾りを外して空に掲げる。

「トリックスター!」

すると、空中に無数の星が現れる。

「ガオウ!?」

ケルベロスは一旦立ち止まる。

どうすべきか分からないようだ。

「なんだ? 何もしないのか…? ならこっちから行くぜ!」

俺はトリックスターを操り、ケルベロスを中心に輪を作る。

『な、なんだ……これは!?』

なぜかケルベロスから人間の声が聞える。

なんだ、あれ生き物じゃないのか?

「ま……どっちでもいいや。回れ!」

トリックスターはケルベロスの周りをぐるぐると回る。

『なんなんだ!?』

「喰らえ! 秋夜仕込みの必殺技—





「デストロイサークル!!」



回り続ける星から一斉にレーザーが発射され、ケルベロスの体を切り裂いた。

『うわああああああああああ!!』

2秒後には、爆発していた。

なんだ、意外とあっさり勝てた。

「戻れ!」

トリックスターを首飾りに戻し、木の陰に座る。

「ふい〜」

汗をぬぐうと—





「すごいですね〜」

「……!?」

いつの間にか、目の前に女が立っていた。

「あ、どーも、初めまして、私は音無烈火っていいます!」

にこやかに手を差し出してくる烈火という女。

「はあ…辻健太です…」

一応俺も手を差し出し握手する。

「ケンちゃんね! よろしく!!」

いきなりあだ名かよ……

でも、以外に美人だから許す。

「よろしくお願いします。烈火さん…」

「よろしくね〜……じゃ、早速はじめようか」

不意に手を離し、背中に手をやる烈火さん。

「! やっぱりあなたも……」

バサッ!!

突然烈火さんは何かを広げる。

もしやレアウエポン!?






「お茶……いかが?」





「お茶かよっ!!」

烈火さんが広げたのは、ビニールシートだった。



ずずず……とお茶をすすりながら、俺は烈火さんの話をまとめる。

「要するに、烈火さんは自分のニセモノを探しているんですね?」

「そーそー、でね、どこかに情報がないかなーって森の中ほっつき歩いてたわけだよ」

「はあ……それで、情報は何か?」

「う〜ん、ニセモノは私とそっくりだって事は分かってるんだけどね〜」

「……要するに。情報は無いんですね」

「うん、まあそういうことだ! ま、教えてくれって言って素直に教えてくれる人なんかいないしね〜!」

「まあ、そりゃそうですけども…」

「というわけでっ! ケンちゃん! 私と手を組んでニセモノ探し手伝ってちょーだい!」

「どええええええええええ!?」

いくらなんでも話が急すぎでしょ!?

っていうか、みんなとの約束まであと4日なんですけど!?

俺がそのことを話すと、烈火さんは

「じゃあ、3日でいいから協力して!」

ほとんど土下座に近い形で頭を下げられた。

何か特別な事情があるのだろうか。

まあ…俺の方の情報収集にも役立つかもしれないし…

「じゃあ、3日だけなら」

「ホント!? やったありがとー!!」

バンザイしながら喜ぶ烈火さん。

まあ、報酬は今の笑顔という事で……

お、俺今かっこいいこと言ったんじゃね?






「いたぞ! 村の襲撃犯だ!!」

「敵は2人だ! 討ち取れ!!」

俺が悦に入っていると、後ろから突然そんな声が聞えた。

「はい?」

一体どういうことなんだろう。

スキやらクワやら、農作業に使う道具ばかりを手にした男たちが、俺と烈火さんを取り囲んでいる。

(烈火さん……誰この人たち?)

俺は小声で烈火さんに話しかける。

(近くに住んでいるこの島のもともとの住民たち)

(もともとの!?)

(ここは無人島じゃなかったからね、もともとは。立派に人が住んでたんだよ)

「何をこそこそと話している!」

「貴様らが俺たちの村を…!」

「食料を返せ!! 村には老人や女子供もいるんだ!」

何だこいつらは? 何を言っているんだ?

「おいおい、ちょっと待てよ、俺はお前らの村なんて知らないぞ? 食料だって自分で確保できるし、大体にして俺は今あんたらの存在を知ったんだけど!?」

「ウソつけ!」

先頭にいた男が石を投げてくる。

「うわっ! 危ねえ! 何すんだコラ!!」

「落ち着いてケンちゃん。……あなたたち、良く聞いて! この人の言ってる事は本当よ! この人はついさっき私と会ったばかり。村の存在は知らないわ!」

「だったらお前はどうなんだ! 村のことを知ってるんだろう!?」

「知ってるけど、私は村を襲ってない! 食料だって自分で確保できるし! まずは話を聞いて!!」


「うるさい! お前ら、かか—


「よさんか!!」

突然後ろから声が響く。

「村長……!?」

先頭の男を押しのけ、現れたのはおじいさんだった。

「すまんのう、うちの若いのが迷惑をかけた。…ったく、馬鹿者共が。よく見てみい。村を襲ったあの女とあちらの方は姿形こそ似ておるが、目は完全に別物じゃろうが…」

「確かに……」

「雰囲気とかも違うよな……」

やっと誤解が解けたようだ……っていうか…

「私と…姿形が似ている…」

「ひょっとして、そいつが烈火さんのニセモノなんじゃない?」

「多分………ちょっと待って! 村長さん!!」

「ん?」

男達を連れて立ち去ろうとした村長がこちらを振り向く。

「何か御用でもあったかの…?」

「あなたたちの村を襲った女について、教えてください!」

「構わんが……ここは何かと物騒なのでな。村へ移動しようか。とはいっても村とて安全というわけではないのじゃが…」

「はい、お伺いさせていただきます!」

何か話がどんどん進んでいく。

「ほら、ケンちゃん行くよ!」

やっぱり俺も行かなきゃダメなのかな……






このとき、俺はこれが後に始まる壮絶な戦いの始まりになることを知らなかった。

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