ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: SURVIVAL GAME 番外編なう ( No.244 )
- 日時: 2010/08/05 11:56
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
SIDE STORY② 「烈火・クローン」
「ここがワシらの村じゃ」
「こんなところに村が……」
「うわあ…人がいっぱい」
村長さんの案内のもと、俺と烈火さんはこの島のもともとの住民の村に到着した。
「村長! この人たちは?」
村長さんが村に入ったと同時に人がわらわらと集まってくる。
「お客さんじゃ。警戒の必要は無い。この村を襲った女に興味があるらしい」
「そうですか……」
みんなが烈火さんを無遠慮にジロジロと見る。
やはり、村を襲った「女」—おそらくは烈火さんのニセモノと同じに見えるのだろう。
しかし、村長さんが無言でキッと周りをにらむと、村人は一斉に散った。
「すまんのう。大事な農作物がやられて、みんないきり立っておる」
「いえ、いいんです……それに、私のニセモノを追っ払えば疑いは晴れるでしょう?」
烈火さんはニッコリ笑いながら言った。
強いんだな—俺は、漠然とそう思った。
「では、ワシの家に行こう」
村長さんはスタスタと歩き始める。
あとについていきながら、俺は村を見渡した。
人数の割には、ずいぶんと田も畑も家も少ない気がする。
きっと、無理矢理連れてこられた人もいるんだな。
「ここじゃ」
若干壊れかけてはいるが、村長の家というだけあって、他の家よりも立派だ。
「お〜い、帰ったぞ〜」
村長さんがさっさと家に入ってしまったので、俺たちも慌てて家に入る。
「しっかし………こんなところまで来ちまったな」
「どうした、ケンちゃん?」
「いや、何でも……」
「気になるねえ…そういえばケンちゃん、妙に時間を気にしてるみたいだけど、約束でもあんの?」
「ああ、仲間と……やべっ」
慌てて話をきるが、とき既に遅し。
「ふ〜ん、君仲間がいるんだ〜」
「いや、まあ……はい」
「うらやましいね、こんな状況下で仲間を作れるなんて。私は第1ステージからずっと1人だよ」
「はあ……あ、申し訳ないんですけど、今の話秘密ですからね」
「分かってるって。手伝ってもらってるから」
「ありがとうございます」
「おい、こっちへ来なさい」
『はーい』
「さて、早速本題に入ろう。何から聞きたい?」
「いつごろから村に現れるようになったんですか? 見たところ、複数回彼女に襲撃されているみたいですが」
「え、そうなの?」
俺は全然わかんなかったぞ?
「いかにも、あの女はこの村を幾度となく襲っておる。ちょうど1週間前のことじゃな…しかし、よく何度も襲われとるのが分かったな」
「簡単です。この村の家には修理されているところとそうでないところがありました。これは最初の方こそ壊されてもちゃんと修理できましたが、やがて物資が尽きてきたか、修理するヒマもなくなったことを示します」
「そうか、だから襲撃は何回も……」
ひょっとして、烈火さんって秋夜と同じくらい頭がいいんじゃないだろうか…
「なるほど、なかなかの観察眼をお持ちのようじゃ。……しかし、ワシらとてあの女の事はほとんど知らないのじゃが……」
「構いません。しばらくこの村にいてもいいですか? ひょっとしたらニセモノに会えるかもしれないんですけど…」
「構わんよ。ワシの家に泊まるといい。そこの少年はどうする?」
「お、俺? ………俺も、少しの間厄介になっても宜しいでしょうか?」
「おお、そうしなさい。2人とも、ゆっくりしていくといい。今昼飯を準備させよう。出来たら呼ぶから、それまで村を回ってみるといい」
そういって村長さんは家の奥へと行った。
「じゃ、見て回りましょうか、ケンちゃん!」
「ええ」
俺たちは、村長の家を出て、村を見て回る。
村の人と話したり、畑仕事を手伝わせてもらったりして、あっという間に時間が過ぎた。
「お〜い、お2人さん! メシじゃぞ〜!」
『はーい!!』
俺たちは村長の家に向かって歩き出す。
と、そのとき—
「ねえねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
小さい女の子が、手招きをしている。
「烈火さん、先に行っててください」
「はいよー」
烈火さんはスタスタ村長さんの家に歩いていく。
「どうしたんだい?」
俺は女の子の方へ歩いていった。
「あのね、お兄ちゃん達に見てもらいたいものがあるんだ!」
女の子は俺の手を取ると走り出した。
「おっと! あまり引っ張んないでよ」
女の子は3分ほど走り続け、ある家の裏に俺をつれてきた。
「じゃーん! これ見てー!!」
「おお……こりゃすげえ…!!」
家の裏にあったのは、大きなカカシだった。
「これでね、あの怖い女の人をやっつけちゃうんだよ!」
「……!!」
「私ね、この村大好き! おとーさんも、おかーさんも、村の人も村長さんも、みんな大好きなの! だから、みんなこれで守るんだ!!」
「……そいつは偉いぞ」
「ねえ、このウルトラカカシ1号であの女の人やっつけられるかな!?」
俺は、一瞬どうしようもなく悲しい気持ちになったが、笑顔を作って答えた。
「ああ……勝てるさ。ウルトラカカシ1号は、無敵だぞ!」
「ほんと!? やったあ!!」
無邪気に跳ね回る女の子を見て、俺は思う。
絶対にこの村を襲った烈火さんのニセモノを見つけてやると。
「どうやら今あの村にオリジナルが来ているらしいぞ」
眼帯をつけた男が隣にいる女に言う。
「オリジナルだと? ……くくく、執念深い女だ。ちょうどいい。あの村ごと叩き潰し、私がオリジナルになろう!!」
女は立ち上がり、村に向かって一歩—
「おい、お前。何見てるんだ?」
な、ばれた…!?
眼帯の男がこちらをにらんでいる。
「なんだい、そいつは? どうせあの村のヤツだろ。たまたま通りかかったみたいだが」
まずい…早く村人に…村長に伝えないと…!!
「消えろ」
ガシュッ……!!
私の意識は、闇の中に消えた。