ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: SURVIVAL GAME 番外編なう ( No.246 )
日時: 2010/08/10 19:55
名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)

SIDE STORY② 「開戦」

「ほれ、チェックメイトじゃ」

「うげ!」

昼飯を食べた後、村長さんと暇つぶしにはじめたチェス。

俺は、3分で敗北してしまった。

「ケンちゃん……弱すぎでしょ」

烈火さんが唖然としている。

「違う! 村長さんが強すぎるんだ!!」

俺は必死の弁解を試みるが、通じない。

「さて、少年。罰ゲームじゃ」

「……!!」

そう、この勝負、負けたら俺は村長さんの仕事を手伝うという約束をしていたのであった。

「さあ、行くぞ」

村長さんはえらく大きいのこぎりを持って外に出た。

一体、どんな仕事なんだ?

俺は一緒に行くという烈火さんと一緒に森へ進む村長さんを追いかけた。

村長さんは森の中を見渡しながら歩いていき、やがて一本の木の根元で足を止めた。

「さあ、少年。この木を切り倒すんじゃ」

「ええ!?」

村長さんが持ってきた大きいのこぎりの意味がやっと分かった。

「ほれ、そっちを持つんじゃ」

「はい……」

俺は大きいのこぎりの片方を持ち、村長さんと木を切りはじめた。

しかし、意外と力を使う作業の為、なかなかキツイ。

「烈火さんも手伝って……」

烈火さんはのんきにお茶をすすっていたが、湯飲みを置くと

「じゃあ、ぶった切りますか?」

背負っていたカバンから小さい鉄の棒を取り出した。

「いや、棒で木をぶった切れるわけ……」

「斬馬刀」

「……な!?」

鉄の棒からものすごい大きさの刀身が出てきた。

ていうか、これって……

「さっきの大きい刀……?」

そう、さっきどこからか出した大きい刀と同じだ。

「そーそー。斬馬刀って言うんだよ。威力は折り紙つきだよ。……ね、村長さん?」

「へ?」

俺が村長さんの方を見ると、村長さんはガタガタ震えていた。

いや、確かに俺もびっくりしたけど、そんなに震えるほどだったか…?

「村長さん、あなたはこれを見たことがありますね? ……そして、この武器の威力も」

烈火さんが斬馬刀を振ると、俺と村長さんが切っていた木が一瞬で倒れた。

「うわ……すげー切れ味…」

「村長さん、本当のことを話していただきましょうか…?」

「……え?」

本当の話? 何のことだ?

村長さんは黙っている。

「いえないなら話しましょう。村長さん、あなたは私たちをハメましたね?」

「……!!」

村長さんの顔が強張った。

「烈火さん……はめられてるって?」

「ま、説明したより見たほうが分かりやすいかな……いい加減出てきたら、私のニセモノさん?」

「へ…!?」

俺は全く状況が飲み込めない。

「ふふふ、よく見破ったものだ」

俺たちの目の前に降り立った影があった。

そいつは—

「烈火、さん……?」

いや、違う。姿形はよく似ているが、まとう殺気が違いすぎる。

まるで、ロボットのようだ…

「ケンちゃん…こいつが私のニセモノだよ」

「……確かに、村の人が間違えるのも無理ないな…で、村長さん。これはどういうことです?」

村長さんは相変わらず黙ったままだ。

「私が答えてやろう。そいつは私が村人と村を襲わないという条件で、ある人物をおびき寄せることを了承したんだ」

「要するに、全ては罠だったと…?」

「そういうことだ。……だが、村長。こいつらは私の本当の狙いとは違う。契約違反だ。よって貴様の村を焼き払う」

烈火さんのニセモノはそう言い放った。

「な…約束が違うぞ!」

それまで無言だった村長さんが急にしゃべりだした。

「約束など知るか。そんなに村が大事なら、守りに行けばどうだ? できればの話だが…」

「そんな……」

村長さんはがっくりと膝をついた。

そのとき、遠くで爆発音が聞えた。

「ふふ、始まったみたいだな…」

烈火さんのニセモノは小さく笑う。






「その口を閉じろ」

「!!」

烈火さんが斬馬刀で斬りかかる。

「お前は、私が必ず殺す」

「慌てるな、オリジナル。お前もそう遠くないうちに私に殺されるんだ」

そのまま激しい戦闘が始まった。

「……で、俺はどーすりゃいいわけよ」

1人取り残された俺は、村がある方向へ眼を向ける。

「助けに行きますか」

俺は烈火さんにこの場を任せて、村に走り出す。






村はすでにあちこちから火の手が上がり、村人は逃げ惑っている。

「くそ、早く何とかしなきゃな…」

俺が火が激しい方向へ走り出そうとしたとき—



「あっち行け!!」

聞き覚えのある声がした。

小さな女の子の声。

俺は声がした方向に向きを変える。

声がしたあたりに行くと、女の子の姿が見えた。

「あの子は…!!」

女の子は、昼前に俺に大きなカカシ—ウルトラカカシ1号を見せてくれた子だ。

そして、もう1人、いる。

「どけ、幼き女よ。貴様に俺を阻む事はできん」

右手をすっとかざして立っているのは、眼帯をした男だった。

「いやだ! ほっといたらまた村を壊す気でしょ!」

こいつが村を……

「どかぬか…ならば仕方あるまい」

男が右手をウルトラカカシ1号の方へ向けた瞬間、ウルトラカカシ1号は木っ端微塵にはじけとんだ。

「キャ!!」

女の子は衝撃で弾き飛ばされた。

「あの野郎…!!」

俺は首飾りを外し宙に放る。

「トリックスター!」

空中に無数の星が出現する。

「ん…?」

眼帯の男がこちらを見る。

「撃て!!」

俺は男に向かってレーザーを発射した。

「むおっ!!」

男はレーザーをまともに喰らって吹き飛んだ。

俺は女の子に駆け寄る。

弾き飛ばされた衝撃で、気を失っている。

俺は火が回ってないところに女の子を運んだ。

「待ってろよ…必ず俺がウルトラカカシ1号の仇をとってやるからな…」

俺は女の子に話しかけると、男の方に走り出した。




男はすでに立ち上がっており、立っている。

「貴様……参加者か」

「そうだけど?」

「……貴様とは何の因縁もないが、それでも我を阻むか」

「当然」

「ならば仕方あるまい。死ぬがいい」

男は右手をすっと差し出した。

俺は、トリックスターを配置する。






「いざ、戦わん」

「望むところ」

俺と眼帯の男は同時に走り出す。



残り63人