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Re: SURVIVAL GAME 黄泉帰り編開始!! ( No.341 )
日時: 2011/05/19 21:11
名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)

STAGE ⅩⅡ 「魔眼覚醒」

「何、だ………?」

かわすだけで精一杯だった腕が、スローモーションのように見える。

そして、剣が突き刺さるであろう場所も、何故か察知できた。

ほんの数秒前まで見えもしなかった軌道が、はっきりと俺の目に映っていた。

何だ?

俺に何が起こっている?

しばらくの間、俺はあっけに取られて動くことが出来なかった。

が、肩の鋭い痛みが、俺を現実に引き戻した。

見ると、剣がわずかに俺の肩に食い込んでいる。

「………っ!」

俺は反射的に前に転がった。

なんとか食い込んでいた剣の軌道からはずれ、残る剣の太刀筋からも外れているのが確認できた。

—と、次の瞬間、ゆっくりだった剣の動きが突然早くなった。

先程のように、目に見えない速度で地面に突き刺さる。

「……………何だったんだ、今の?」

必殺の一撃をかわすことができたが、俺は自分に何が起こっているのか理解できなかった。

だが、巨大な甲冑ムカデ(とでも呼べばいいのだろうか?)は俺に考える隙を与えない。

さらに剣の一撃を浴びせかけてくる。

しかも反応が遅れたため、すでに剣は振り下ろされ始めていた。

「………!」

俺はとっさに滅華を前に構えて防御の姿勢をとった。

ダメだ………受け切れない!

そう思って、俺は目をつぶった。

そして、金属がぶつかり合う激しい音が響く。

だが、その次に来るはずの衝撃は来ない。

「………?」

恐る恐る目を開けると、信じがたいことに、俺は滅華で剣の1本を受け止めていた。

しかも、よくよく見れば受け止めた剣にはヒビが走っている。

甲冑ムカデも、何が起きているか理解できないようで、そのまましばらく硬直していた。

ここまでくれば、もはや疑いようがなかった。

理由は分からないけど、俺は瞬間的に身体能力が格段に跳ね上がっている。

そして、この能力なら—あの甲冑ムカデにも勝てる!

俺は滅華に力を込めた。

途端に、ヒビ割れていた剣にさらなるヒビが入る。

「—ふっ!」

そしてもう一押し。それで剣は完全に砕け散った。

「シャ………!?」

甲冑ムカデは予想もしなかったことに唖然としている。

その隙に、俺は近くにあった腕に飛び乗り、一気に駆け上がる。

1秒とかからず、顔面の直ぐ近くまでたどり着いた。

すると、甲冑ムカデの口が大きく開き、中が開いた。

あの強力な光線だ—だが……!

「関係ねえよっ!!」

一閃、俺は滅華を横に薙いだ。

予想通り、甲冑ムカデの顔はあっけなく両断され、次の瞬間には轟音を上げて爆発四散していた。

















甲冑ムカデを倒した後、しばらく俺は地面の上に大の字になっていた。

あれだけの激闘だったのに、息一つ上がっていない。

やはり、俺は何かが原因で進化を遂げたようだ。

その感覚は、俺が初めて滅華を手にしたときのそれとよく似ていた。

正直に言って、得体の知れない、不気味な力だ。

けど、何としてもあの島に戻らなければいけない俺にとっては、ありがたい力だ。

今はその力について考えるより、黄泉帰りのことに専念しよう—

と、思い、体を起こした瞬間、目の前に扉が現れた。

「………なるほど、第一の試練はクリアー…か」

大きな充実感と共に、俺は扉を押す手に力を込めた。

入る扉と同じ様に、すっと開いた扉の先には、案内人がいた。

「おめでとう、と言わせてもらおうか、遠野秋夜。一の門突破だ」

案内人は無表情で拍手をした。

「そりゃどうも、で、次の試練は何だ?」

「そう焦るな。次の試練の前に、お前に教えておくことがある」

案内人はそう言って、俺に薄い正方形の鏡を出してきた。

「……これは?」

「自分の目を見てみろ」

俺はそう言われるがまま、鏡に映った自分の目を見た。

「………あっ!?」

何と、俺の目は藍色に染まっていた。

「気付いていただろうが、お前は新たな力を目覚めさせた。それがその証拠だ」

案内人は薄笑いを浮かべながら言った。

「一体この力は何なんだ…?」

「魔眼、と呼ばれている力だ」

「魔眼?」

「そう、魔眼だ。呼んで字のごとく、悪魔の眼だ」

「悪魔って…………」

「この世にいる人間は2つに分けられる。99%は、お前が今まで接してきた人間達、そして残りの1%は、お前のような『超人(ネオ)』と呼ばれる人間だ」

案内人は、唐突に訳のわからない話を始めた。

「…よく理解できないんだが」

「しなくてもいい。聞くだけ聞け、続けるぞ……要は、お前は人間を超える力を手に入れたということだ」

「人間を…超える…?」

「そうだ。お前は悪魔の力を手に入れることで、最強と言ってもいい力を手に入れた。それがどれほどのものかはお前自身が証明している」

「…………」

確かに、さっきの力は明らかに常識を超えていた。

しかし、それが悪魔の力と言われても、はいそうですか、と簡単には飲み込めなかった。

「だが納得できない。何故俺が悪魔の力なんか?」

「お前は1度死んでいる。その時点で既に悪魔としての素質は覚醒していた。ちなみに、さっきのでお前が引き出せた悪魔の力はせいぜい0.1%ほどだが、鍛えれば剣の一振りで島ひとつは消し飛ぶぞ」

あまりに非現実的すぎる話だが、今こうして死んだはずなのに生き返ろうとしている時点で現実とはかけ離れている。

今は気にするより、この力を受け入れることが先決なのかもしれない。

「分かった……俺にはその魔眼とやらが覚醒して、俺は悪魔の力を手に入れた。そういうことなんだな?」

最後の最後に、念押しで確認した。

「その通りだ……さて、質問がなければ次の試練に進むぞ」

そう言って、案内人はまた姿を消した。

後には、二と書かれた門が残っていた。

「…………よし」









意を決して、俺は一歩を踏み出す。