ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: SURVIVAL GAME 黄泉帰り編開始!! ( No.343 )
- 日時: 2011/08/08 21:51
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: q7/5/h0o)
STAGE ⅩⅢ 「心の闇」
二の門に軽く手を触れる。
すると、先ほどと同じように門が開いた。
同時に、真っ白な光が差し込んできた。
「……っ!」
俺は目を細めながら門の内側に足を踏み入れる。
まず最初に視界に入ってきたのは、豪華に装飾されている扉。
「これは……?」
俺は扉に近づき、ドアノブに手をかけた。
鍵は掛かっていないようで、扉はすんなりと開いた。
次の瞬間—
「何か」が扉から現れた。
「!!」
俺はとっさに扉から飛びのいた。
「オオ………」
その何かは、人間だった。
正確にいえば、人間のように見えた。
「何だこいつは………」
胴体に大きな切り傷があり、まとっている衣服は血にまみれたボロきれのようになっている。
そして何より、生気がまったく感じられない顔。
とても人間とは思えなかった。
「ゾンビ……?」
目の前にいる奇妙な生命体は、濁った眼で俺を見て何かを小さくつぶやいた。
「…ノ…………ヤ……」
「……?」
「………オノ………ア………ヤ」
何を言っているんだ…?
声を聞き取ろうと一歩前に踏み出すと—
「トオノ………アキヤアアアアアアッ!!!!」
突如俺の名を叫び、それは飛びかかってきた。
「うわっ…!?」
完全に虚を突かれたが、なんとか滅華の鞘で攻撃を防いだ。
「フー……フー……」
狂気に満ちた表情でゾンビは迫ってくる。
「………!?」
その顔を見た瞬間、かすかな違和感を感じた。しかし、俺は反射的に次の行動に出ていた。
ゾンビを押し返し、奴のみぞおちに膝を叩きこむ。
「ガ………!?」
よろめいたすきを逃さず、俺はゾンビを斬り払った。
「ガアア……アア」
ゾンビは黒い煙となって消滅した。
すると、ゾンビが出てきた扉も消滅した。
俺は滅華を鞘におさめ、息をつく。
「………今のは」
急接近したゾンビを見た瞬間に感じた違和感。
どこかで見たことあるような顔だった気がする。
それもごく最近に。
「まさか……?」
俺がある結論にたどり着いた時だった。
突然、目の前にまた扉が現れた。
「…!」
しかも一つではない。どんどん違う扉が出現する。
扉の数は加速度的に増えていき、ついには空間という空間を埋め尽くすほどになったところでようやく増えなくなった。
もしかして、扉一つ一つからさっきのようなゾンビが出てくるのか…?
だとしたら、俺は無数のゾンビを相手にしなければならなくなるということになるが……
その場で思考を巡らせていると、不意に声が聞こえた。
≪真実の扉を見抜け≫
「誰だ?」
辺りを見渡すが、それらしい姿は見られない。
≪その無数の扉の中に1つだけ、真実の扉がある。その扉を見つけなければ試練を突破できない≫
「真実の扉だと…?」
俺を無視して、声は続いた。
≪もしも偽りの扉を開いたならば、汝が生み出した怨霊が汝に牙をむくであろう…真実の扉を見つけるのだ……≫
それだけ言い残し、声は聞こえなくなった。
「……つまりは、正解の扉を見つけないとここから出られないってことか」
だが、扉の数は無数にある。
一つ一つ調べるにしても時間がかかりすぎる。
それに、俺が生み出した怨霊とは、どういう意味だろうか。
気になることはいくらでもある。
が、今の俺には時間がないことも事実だ。
一刻も早く仲間たちのところに帰らなければいけない。
「………迷ってる暇はないな」
俺は意を決し、目の前にある扉に触れた。
予想通り、中からゾンビが出てきた。
こいつもどこかで見たことがあるような気がするが—
「関係ないっ!」
一太刀のもとにゾンビを斬り捨て、俺はまた別の扉に触れる。
私は持っている水晶を通して、遠野秋夜の様子を見ていた。
案の定、彼は扉を片っ端から触り、出てくる怨霊を斬っている。
だが、そんなことをしていても永遠に扉は見つからない。
偽りの扉をいくら消そうとも、また新しい偽りの扉が出てくるだけだ。
ちょうど人の世で、偽りが連鎖するように。
偽りを否定するだけでは、力は手に入らない。
偽りを認め、真実を見つけ出さなければ、この部屋からは出られない。
向き合え、遠野秋夜。自らの過去に。
すでにお前は気づいているはずだ。
怨霊の正体に。
撃ち砕け、全ての偽りを。
そして覚醒させるがよい。もうひとつの魔眼を—
「はあっ!!」
また一体、ゾンビを斬った。しかし、違うところから新たな扉が現れ続ける。
「くそっ!」
それでも手を止めるわけにはいかない。
俺は次の扉に手をかけた、が—
「…………何!?」
そこにいたのは…
—貴様っ!! この俺に、後藤心に1人で勝てると思ってるのか!?
そう、SURVIVAL GAME第一ステージで、巨大ロボットに乗って現れた男、後藤心だ。見る影もないが、間違いない。
「………やはりそうか!」
後藤を見て確信した。
怨霊とは、かつて俺が命を奪った人間のことだ。
思えば、最初に斬ったゾンビも、俺が組織にいた時の敵だった。
これで謎は一つ解けた。だが—
俺は後藤を斬りながら、さらなる疑問を感じた。
何故この連中が……?
必死に答えを絞りだそうとする。
「怨霊と偽りに、何の関係が—え?」
目の前に現れた光景に、俺の思考は完全に停止した。
それはあってはならない光景だったから。
「バカ……な」
「ヘヘ……ヒサシブリダネ………アキヤ」
目の前にいるのは間違いなく、かつて俺のせいで死んだ少女—
遠野茉莉だった。