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Re: SURVIVAL GAME 黄泉帰り編終盤突入!! ( No.345 )
日時: 2011/08/17 21:18
名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: XL8ucf75)

STAGE ⅩⅣ 「運命(さだめ)を超えて」



「何で…何でここに!?」

「ナンデッテ……アキヤニコロサレタカラダヨ?」

茉莉は、ゆっくりと、まさにゾンビのように俺に近づいてくる。

確かに俺のせいで茉莉は死んだ。けど、こんなのあんまりじゃないか…!?

必死の思いで叫ぼうとした。だがそれは声にならなかった。

「モウキヅイテルヨネ? ココニイルノハミーンナアキヤニコロサレタヒトタチダヨ?」

「…………分かってる。けど……」

「ケド? マア、イイヤ。コノマンマジャハナシヅライヨネ?」

「…茉莉?」

突如、茉莉は糸が切れたようにがっくりと膝を突いたかと思うと、その体を黒い煙が包み込む。

「バカな、俺は斬ってないぞ!?」

俺は慌てて茉莉のそばに駆け寄った。

すると、いっぺんに煙が消えうせ、茉莉は勢い良く立ち上がった。

「じゃじゃーん!」

「え!?」

茉莉の顔には血の気が戻り、かつてのような生命の輝きが戻っていた。

「あーんなゾンビみたいなのと会話したくないでしょ? 話しやすいように元通りになりました!」

屈託もなく笑うさまは、本物の、生きていた頃の茉莉だ。

「茉莉……」

「さてと! じゃあ本題に入ろうか!」

茉莉は戸惑う俺を無視して話を進める。

こういうところも昔とちっとも変わらない。

ただし、昔と違うのは—

「とりあえずさ、秋夜」

「ん?」







「死んでよ」








平然と俺に銃を向けたこと。

「くっ!!」

俺は反射的に右にとんだ。

足を銃弾がかすめる。

「あららーよけられちゃったかー……さすがだね、秋夜」

「茉莉! 一体—」

「どういうつもりかって? 殺すんだよ。恨みを晴らすために、さ」

「……っ!」

俺は反論の言葉を口にする事は出来なかった。

そもそも、反論の言葉を思いつかなかった。

「秋夜、キミのことはホントに好きだったよ。でもキミは私を裏切ったて、殺した。なのにキミは……キミはっ! のうのうと、生きているッ!!」

さらに引き金を引く茉莉。俺は反撃も出来ぬままただ銃弾をかわすことしか出来ない。

「キミは、忘れた!! 私を殺したことをっ!! 私だけじゃない! いろんな人を死に追いやって、そのくせ自分だけが被害者面して、正当化して、忘却と言う逃げ道をひた走ってきたんだっ!!!!」

「違う! 俺は……俺はもう……!!」

「死んだって!? そんなこと言い訳にならない! 今回のゲームでもそう! 自分が生き残るためにたくさんの人を殺したじゃない! しかも、生き返れるチャンスに、みっともなくしがみついてっ!」

もはや茉莉にまともな理性が残っているとは思えない。だが、茉莉の言葉の1つ1つが、俺の胸に突き刺さった。

「死んでよ秋夜ぁっ!! 死んで私とずっと一緒にいようよ!! お母さんもいるよ! 秋夜の大事な人、たくさんいるからあっっ!!!」

狂ったように茉莉は引き金を引きまくる。

その様子を見て、俺は思った。

俺はやはり、死ぬべきなんじゃないかって。

生き返らなければならない。そんなのは、俺の勝手な思い込みだったんじゃないか……?

それなら、それなら…………今頑張っていること全て、無意味じゃないか……

俺は足を止め、茉莉の顔を見た。

哀しい顔を、していた。

「死ねえええええええええええええええええっ!!」

いくつもの銃弾が、俺に向かってくる。

そして俺は、意識を失った。

















夢を—見ていたのだろうか。

気付けば俺は自分が住むアパートの一室にいた。

「俺は………」

《夢ではない》

どこからか、声が聞えた。

「誰だ!?」

《誰だ、とは失礼だな。ずいぶんと長いこと貴様と戦ってきたはずだが》

「………滅華か!?」

《ふん、ようやく気付いたか。まあいい、貴様に説教をくれてやろう》

「説教?」

悪魔に説教されるのもどうかと思うが………

《貴様先程、自分が生き返る意味などないと思ったな》

「ああ……そうだな」

《愚か者め。そんなことだから2度も命を落とすのだ》

「なっ……いきなり何を…」

《貴様には既に迷う時間などありはしない。貴様が迷い、躊躇う間にも、大切な仲間とやらに迷惑が掛かるのではないか?》

「っ……!!」

確かに—確かにそうだ。

《だがしかし、あの娘の言うことも一理ある。貴様の世界では人を殺すことは罪なのだろう? その事実を無視し、自分を正当化し、貴様は自分の罪を偽っていたな》

「……!! それが、偽り、なのか?」

《答えるまでもなかろう。何にせよ、貴様が貴様の罪、すなわち過去に目を瞑る限り、この黄泉から帰ることはできんな》

「ああ、そうだな……分かったよ滅華」

《ふん。ならばさっさと戻ってあの亡者を斬り捨てろ。早く生き返って我を暴れさせろ》

「お前も相変わらずだな……」

苦笑しながら、俺は扉を開けて駆け出した。

















「……秋夜!?」

「よう、茉莉」

俺は再び、茉莉の前に立つ。

「まだ死んでなかったんだ! 往生際が悪いねっ!!」

俺は茉莉が放った銃弾を滅華で叩き落とす。

「………くっ!!」

「ごめんな、茉莉」

「何よ……!?」

「俺ずっと逃げてた。人を殺すことは全てしょうがないと思ってた。でも違う。俺は罪を犯してきたんだ。だから俺は……罪を認めるよ」

「! なら、なら………っ!」

「でも、それでも—俺は斬る。たとえ罪になっても、守りたいものがあるから」

「な………」

「だから—今ここで、俺はお前を、斬る!!」

今なら分かる、見える。真実が。

俺の目の前にいるのは茉莉じゃない。俺自身の罪だ。

目を背けない。真っ向から立ち向かって、そして斬る!!

「刃桜、奥義—!!」

今までにない数の刃桜が、美しく舞う………!!


















「—百花繚乱!!」