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Re: 阿修羅姫と鬼神。(オリキャラ募集中です!) ( No.37 )
日時: 2010/05/07 19:26
名前: 薔薇薔薇娘 ◆Mu2zZKM5c. (ID: F35/ckfZ)

第八話「悲しみがやがて始まる」

「……」
「美麗、大丈夫か?」
ここ最近いつも変だ。さすがの俺も心配になる。
「……はい」
あの謎の声が聞こえてからどうも調子が悪い。顔は青ざめ、虚ろな瞳、乾いた唇……。
「っ……」
立ちあがろうとしたとき、視界が真っ暗になった。
「おっ、おい!?」
倒れてきた身体を受け止めた。
「目を覚ませ! 病気程度で倒れる雑魚ではなかろう!?」
平手打ちを食らわせたり、頭を机の角に打ち付けたりするが、起きる気配はなかった。
「こうなったら……」
そして、愛用の得物・戟を取り出す。
「それはダメっしょ!」
たまたま通りかかった雅焔が必死で阻止する。
「何故だ!? 美麗の危機に少し腕を斬るだけだ! 痛くて目が覚めるだろう!?」
どこか感覚がおかしい。
「それおかしいよ! 蛮浄寺さんに話せばわかるんじゃない? お寺の人なんでしょ?」

「上寿!!」
「なんだ?」
静かな部屋で兵法書を呼んでいたので、その大きな声は余計に響いた。
「美麗だ!! 見てやってくれ!」
「……」
あの阿修羅姫とも呼ばれる方が倒れるとは……。何か大変なことが起きたのだろう。
「……! これは……。何かに身体が侵されている」
霊が身体の中に侵入した、とかいう人はかなりいるが、人間が阿修羅姫の体の中に、阿修羅姫の忘れた記憶を流し込んでいる。
「……?」
どういうことだ? 何かが侵入? 変わった身体だな。
「この状態から回復するには、かなりの時間とかなりの痛みが必要だ。阿修羅姫が現実から逃げずに耐えられるか……。問題はそれだ」
「もし、逃げたらどうなる?」
「『死』あるのみ」
「……」
大丈夫だ。阿修羅姫と言われるのだから、そう簡単に何かから逃げたりせん。
自分が向き合わなければならないものから逃げるような、そんな弱い人間ではない。あの美麗は……。