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Re: 阿修羅姫と鬼神。(オリキャラ募集中です!) ( No.53 )
日時: 2010/05/18 17:07
名前: 薔薇薔薇娘 ◆Mu2zZKM5c. (ID: F35/ckfZ)

第壱拾参話「還る場所へ」

『影虎、領土をめぐって争いが起きました。全軍の指揮と総大将をお願いできますか?』
『あぁ。構わん』
畑を耕していたところ、村長に声をかけられた。
『美麗、あとは任せていいか?』
『はい』
『影虎と美麗は仲がいいですね』
『小さいころからずっと一緒にいましたから』
気づけばもう15歳になっていた。
『失礼、貴女がここの村長ですか?』
一人の女性が訪ねてきた。
『ええ、そうですけど……。どなた?』
『海を一つ越えた所の村の村長です。そちらの娘は私の子供……。返していただけますか?』
『え、ええ……。美麗、母様が見つかりましたよ。よかったですね』
『美麗、行きますよ』
『母様、お待ち下さい。せめてこの別れを影虎様に……』
せめて最後に影虎様を……。
『影虎……!? あの鬼神ですか!? 貴女はあんな鬼神と手を組んでいたのですか!!?』
『……』
そう。この村で影虎様のことが知られていなくても、所詮は鬼神と恐れられる男。娘がそんな男と手を組んでいたと知れば、誰もが怒るだろう。
『鬼神……? まさか、あの方は災いの武を持った鬼神……!?』
噂にだけ聞いたことがあります。
『そうですわ、この村にいるのでしょう。早く追い出さねば必ず災いを及ぼします』
『ええ。彼が帰ってきた時に必ずや討ち取ります。修羅、いいですね?』
『……問題ない』
『それでは私は』
そして、阿修羅姫とその母は帰って行った。

『美麗、これを飲みなさい』
『……』
黙ってそれを飲み干す。すると、苦しくなり、倒れた。
『……鬼神と関わっていたなど愚の骨頂。その記憶は忘れてもらいます』
あのとき美麗の母が飲ませた薬は、記憶をすべて消し去る薬。五つ祭りも、影虎のことも、燃えた村の事も、家族のことも……。すべてを忘れていた。
『……』
目が覚めると、小さい頃悪戯をしたら閉じ込められた部屋に拘束されていた。が、『小さい頃悪戯をしたら閉じ込められていた部屋』のことなど、あの薬で忘れていた……。
『私は何故このような場所に……』
解らない。何も思い出せない。思い出そうとすればひどい頭痛に襲われる。