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第16話『堕天使と死神』


ここは、○×公園の前。
今、ここは、誰もいない。昨日は結構人がいたのにな。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
キクさんに、虐めっ子をここに呼び出してもらった。は、いいんですが……。
何故か、公園には、３人の少女とべリアル。
３人の少女とべリアルは、なにか話していますが、こちらには聞こえない。
べリアルが人間と話してるとこ、初めて見たよ。
そして、べリアルの服装にも驚いた。
肩まである長い髪は、ゴムで束ね、服は、黒のパーカーにジーンズ。
いつもは、天使がきている白い服を着ているんだけど……。
……なんというか、いつもの格好とは大違いだ。

僕は公園のベンチに座り、噴水の前で話している３人の少女と、べリアルを見ていた。
ここでなら、あの人たちの会話も聞こえる。
あ、べリアル、笑った。
そう思っていると、べリアルが少女の手首を掴む。
べリアルが少女の手を離すと、少女の手首に赤い跡がついていた。
一般人相手に、何をしているんですか、あの人は!?

「何をしているんですか？　ベリアル」

僕がそう聞くと、べリアルはこちらを向き、ニコリと笑った。

「おや、アリスじゃないですか。貴方こそ、こんなところで何をしているんですか？」

べリアルは、僕にそう聞いてきた。

「沙希さん、明さん、和美さんを待っているんですが……」

僕がそう言うと、肩まである黒髪の少女がこちらを向いた。
……なんですか、その顔。
驚いたような顔をしてこちらを見ていますが、僕は少女が驚くようなことは何もしていない。

「……私、和美。茶髪のが明で、黒髪のショートカットのが沙希」

少女はそう言って、不思議そうな顔でこちらを見る。
あぁ、この人達か。キクさんを虐めていたのは。
……しかし、１つ気になることがある。
べリアルは、何故和美さんに攻撃的な態度をとったのだろうか？
べリアルも、一応力の加減はするし、人間にはなにもしない。むしろ、親切にする時まであるくらいだ。
人間が書いた図鑑には、醜い心を持っていると書いてあるべリアルだが……。
ソドムの街を滅ぼしてからは、一応おとなしくなったし。天使とも仲が良く、聖域を汚さなくなった。
……なのに、彼はなぜ人を傷つけたりするんだろう？

いや、そんなことより、だ。
僕の今日の獲物はこの少女３人。
……そして、べリアルが傷つけようとしているのも、この３人。
大嫌いな人と、獲物の取り合い……。

地獄絵図。阿鼻叫喚の地獄絵図が安易に想像できる。
３週間前、喧嘩したばっかりなのに、また傷を作るのはごめんだ。

「……あの、べリアル、この子達、僕の獲物なんですけど……」

僕がそう言うと、べリアルはコクリと頷いた。

「……でも、御主人からの命令で、この人達を消せと。この人達は、私の獲物でもありますから」

べリアルは、腕を組んでそう言った。
……この人、いつの間に主人ができたんだ？

「……でも、どっちにしても消すのなら、二人でやった方が早いでしょうね」

ベリアルはそう言って微笑んだ。
……あぁ、つまり、協力してやってもいいってことか。
僕は、首を縦に振って見せた。
べリアルはそれを見て、クスクスと笑った。

べリアルと一緒に人殺しというのも、なんだか嫌な感じですが……こちらの方が早いし、仕方がないですね。