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＃１　　

「え…何、コレ……」

誰に聞いたわけではない。思わず出てしまったのだ。
一回からは相変わらずトーストとコーヒーの香り。もうそろそろお母さんの声が部屋に響くだろう。

「みるくーっ起きなさいっっっ!!!!」

ほら、ね??
適当に返事を返した後、私はまた、考えた。

爪の先が黒い。

この黒さは、単なる汚れ———とか、そんなもんじゃない。
ところどころコケの様な深緑色があって、膿のような黄色も混じっている。
あまりの気持ち悪さに、顔を背けたくなるほどだった。

「どうしよ……。やだ…」

虫の呟きほどの声で、呟いた。私は恐怖に晒されていた。

「みるくーっ?!遅刻するわよーっ」
「はぁい……」

聞こえてもいないだろう、小さな返事を返す。
とりあえず、この爪は切っておこう。そうすれば、違う場所に移る事も無いだろうし。
百円均一で買った小さな爪きりで、親指の爪の先を、少し切った。
そして私はいつもの様に、身支度を始めた。

その頃にはもう、爪の事など、忘れていた。