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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: オンリーワンスピリット(仮題) ( No.1 )
- 日時: 2010/05/23 22:14
- 名前: 扇子乃和登 ◆D2y6C8Qlfc (ID: 2nMcmtOU)
プロローグ
山奥の林の中で、私たちは誰にも聞かれてはならない話をしていた。
「……なぜ助けた」
「そこに傷ついた子供が居たからだ」
「僕は人間の子供ではない」
人間の軍隊に親を殺され、人間の奴隷として捕らえられようとしていたこの少年を、私は助けた。理由はそこに子供がいたから。
それ以上でもそれ以下でもない。
「わかっている。だが、子供には変わりない」
「僕は人間の敵、魑魅魍魎の類だぞ」
「そんなことはどうでもいい。もし、チミモウリョウというものが敵であるとしても、子供なら助けて当然だ。それが、本来の人間の心だ。それに」
「将来的に役に立つ。そう言うつもりか」
「違うな。将来的ではなく、今現在、役に立つ……っと、このまま強引に連れ帰っては強制連行だな。どうする、俺についてくる気はあるか?」
「ああ。僕の命はあんたの物だ」
「おいおい、例え助けられた命でも、そんなに簡単に相手のものにしてはだめだ。人は、助け合って生きてゆく生き物だ」
「ではなんと言えばいい?」
「そうだな、『僕はマシューの息子です』で、いいんじゃないか」
お前に人間としての生き方を教えてやる。
これからは、戦いに巻き込まれる必要は無いんだ。
人間として、誰かを信じ、誰かに信じられ、誰かを助け、誰かに助けられ、誰かを愛し、誰かに愛され、そして潤った心を冥界まで持っていくんだ。大丈夫、お前なら出来る。
私は、その少年を東にある自分の家まで連れて行った。今頃、私の帰りを待っているだろう、妻が残した、私の宝物が。待っていろ、もうすぐ帰る。お前の新しい弟を連れて……。
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