ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: オンリーワンスピリット(仮題) ( No.10 )
- 日時: 2010/05/23 22:15
- 名前: 扇子乃和登 ◆D2y6C8Qlfc (ID: 2nMcmtOU)
第一章
朝、七時に起きて朝食を食べ、八時にギルド『フォロー・ザ・スカイ』の朝礼に出席。十二時に昼食を食べ、一時からギルド内戦闘訓練に参加。出番を待っている者は、山へ山菜を取りに行ったり、狩りに行ったり、時には町に日用品を買いに行く。
この訓練では、一般的な武道大会と同じ模造武器を使用する。ルールは色々あるが、代表的な物として『相手の武器が利き腕、頭、胸、腹に当たったら負け』というのがある。
これが僕の日常。仕事を請負っている時は、その一日が自由に使える。もっとも、仕事で半日は潰れてしまうのだが。
おっと、ギルド内訓練の時間だ。今日の相手は……
「ゲッ、フライかよ」
「第六試合、中級剣士兼上級弓士、リーダー資格所持、アーノルド=ウィザード対、上級剣士フライ=エドウィン! 両者、前へ!」
ギルド内、少年少女のグループで戦闘能力最強と言われる男。フライが目の前に立っていた。どうやって戦えばいいのだろう? フライの腕力には到底敵わない。
……よし、奇襲戦法だ!
「礼! 始め!」
礼の為に抜いた片手剣を、始めの合図と同時に背中へ。その手で右の腰に着けたバスケットから矢を一本取り、盾としても使っている弓に番える。
その間にフライは、こちらに突撃し、矢を番えたのを見て、一歩下がった。
矢を放つ、剣で弾かれた。
「火炎弾!」
魔法による炎の弾が飛んで行く、剣で吹き飛ばされる。
「地砕き!」
魔法で地面を叩き割る、余裕でかわされる。
だが、魔法を放つには、左手だけで十分だった。
飛び掛って来た。横っ飛びになってかわす! 僕は地面に這いつくばりながら、必死に矢を番えた。
その時、フライが見せた表情は、勝利の喜びでも、相手が弱すぎる事への失望でもなかった。
「畜生!」
悪態をつきながら、空から降ってきた僕の剣を弾く。その瞬間、放った矢が右腕に当たった。
「フライ、利き腕負傷により戦闘不能! よってこの勝負、アーノルドの勝ち!」
ルール上、試合では利き腕を負傷させる行動をとれば勝ちなのだがこれは……
——実践ならば、負けていた——
「第七試合、疾風剣士兼上級魔法士ラルフ=ウィザード対、中級魔法士アデル=エンディンゲル!」
次の試合は、従兄弟のラルフと、ギルド内少年少女唯一女の子、アデルの試合だ。
……あれ? アデルが居ない。
「さては山に行ったきり帰って来てないな。アーノルド、連れ戻せ! 確かリザイスも一緒だった筈だ!」
「兄貴は辛いな、アーノルド」
「フライ君、心配だから付いていってくれ!」
「ええっ!? そりゃないっすよ、マスター」
「頼む、強化研修の練習も兼ねて!」
「行ってきます! アーノルド、付いて来い! じゃあなかった、付いていくぞ!」
「あ、有り難う……」