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Re: オンリーワンスピリット(仮題) ( No.17 )
日時: 2010/05/23 22:16
名前: 扇子乃和登 ◆D2y6C8Qlfc (ID: 2nMcmtOU)

      第一章続き

 山に入り、草木を掻き分け前へ進む。そんな僕の横で、フライは木々を切り倒しながら進んでいた。

 「ねえフライ、自然破壊は駄目だよ」
 「ああ、これの何処が自然破壊なんだ?」
 「木を切る所とか、木を切る所とか、木を切る所とか……」
 「これは間引いてるんだ。よく見ろ、俺が倒した木は全て他の木の成長を妨げている!」

 そう言いながらフライはもう一本切り倒す。しかし、倒れた方向がまずかった。
 倒された木が隣の木にぶつかり、隣の木までもが倒れてしまったのだ。

 「……誰にでもミスはある」
 フライを白い目で睨み付ける。
 「さて、アデルとリザイスを探すか。まずはここを見ろ、何が見える?」
 とりあえず言われた通りにした。
 「足跡が二つ」
 「よし、新しさと大きさからしておそらくアデルとリザイスだろう。辿るぞ」

 二人で足跡を辿った。すると、
 「おい、これは何の足跡かわかるか?」
 「えっと……わからない」
 「これは熊だな。周りの木々が傷ついている事からして、戦闘があったものと考えられる」
 「どうなったの!?」
 「ここに熊の死体がある。ちょっと見てみろ」

 フライは、熊の右手が切り取られている事と、心臓を何かが貫いている事を指摘した。

 「熊の右手が無い事、心臓が貫かれている事から、ここで何が起きたかがわかってくる。
 まず、右手が無い理由だが、この熊は蜂蜜を取ったのではないか? そして犯人は、その蜂蜜欲しさに今回の犯行に及んだと見られる」
 「探偵ドラマの見すぎじゃない?」
 「よって、今回の事件は『強盗殺人事件』だ!」
 「いやいやいやいや、強盗殺『熊』事件だよ」
 「そして、今回の犯人は、アデルだ」
 「まあ、甘いものに関しては食物連鎖の頂点に立つからね……」
 「その通り。つまりアデルは、蜂蜜欲しさにその腕力によって熊の心臓を手で貫いたのだ!」
 「……はい?」
 「アデルは俺のような両手剣やお前のような片手剣、さらにはサバイバルナイフに至るまで切断武器は一つも持っていない。腕で殺ったとしか考えられない!」
 「そんなバカな」
 「更に! 傷口の形からして殺『熊』時、アデルはチョップで殺ったと考えられる」

 本当だ、傷口の形が縦に入ってる。まるで……


 「って、それどう考えてもリザイスの片手剣だろ!」
 「何、つまりアデルとリザイスは共犯か!?」
 「というか襲ってきた熊を倒した所、偶然にも蜂蜜が右手に付いていたからアデルの命令でリザイスが切り取ったんじゃない?」
 「……そういう考え方もある」
 それ以外考えられない……。