ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Monochrome World 【#02up】 ( No.5 )
- 日時: 2010/05/15 00:51
- 名前: 獅堂 暮破 ◆iJvTprGbUU (ID: D0RCrsH7)
#04 「報復」
「っは……」
車の揺れでふと目を覚ました。
「夢、か」
昔の夢を見ていた気がする。
冷や汗で額に前髪が張り付く。
悪夢、だったようだ。よくは覚えていないが。
「起きたか?」
俺の右脇で睡眠を取っていた影近が静かに腰を起こした。
まだ雨岬達は寝ているようだ。
「起こしちゃいました?」
俺が問えば、彼は「俺寝つき悪いの」なんてふざけたように言った。
そんな様子に小さな笑みが零れた。
……いやいや、駄目だろ。こんな馴染んじゃ。
俺は頭を右左に振った。
「……夜暮、大丈夫か?」
「へ?」
突然の問いかけに間抜けな声が出てしまった。
「顔色、すげぇ悪いぞ」
自分で自分の顔は見えないから、今の自分の様子は分からないが、
影近の真面目な声からして余程調子が悪そうに見えているんだろう。
「ちょっと夢見が悪かっただけ」
手をひらひらさせながらそう答えれば、まだ心配そうな表情をしているが一応は納得してくれたようだ。
その時。
車が急停止をした。
寝ていた雨岬、紅馬も目を覚ます。
「ん、着いたんですか?」
俺は車窓のカーテンを開けて外を見る。
「……わー俺、まだ夢を見ているみたい」
明らかに今の俺の台詞は棒読みだった。
だって外に広がるのは、
自分達の乗っている車を囲むように並んだ、
黒い複数の車。
「囲まれたな」
影近、それに雨岬も真面目な表情で外を見つめる。
そして武器の手入れを始めた。
「え、何を……」
俺が問おうとしたら、「シッ」と雨岬に止められた。
影近は大型の銃を二丁腰元のケースにしまい、コートの着崩れを直した。
雨岬も小型ナイフを数本ケースに収め、髪を一つに結い上げた。
「夜暮、車から絶対に出るな。カーテンも開けるな。ここで、じっとしていろ」
そう言われ、状況把握が成っていないが小さく頷いた。
それに二人は笑みを返して一気に車から降りる。
外から聞こえる銃声と金属音。
俺はぎゅっと力いっぱいに手を握り締めて、その音に耳を傾けていた。
その音だけが外の戦闘の激しさを俺に伝えていた。
俺は、ただただ二人が怪我をしないように、生きているようにと祈っていた。
刹那——
車のガラスが割られる音に俺はハッと顔を上げた。
そこには金髪の数人の男がバットやら銃やらを持って立っている。
完全にこちらを敵と見なしている。
丸腰の自分にはどう頑張っても太刀打ちできる場面ではない。
だが、そんな事を考えている余裕も俺にはなかった。
鈍い音と共に運転手は倒れる。
頭からは大量の血。
医療担当者である紅馬は急いで彼に駆け寄るが、それも男達によって阻止された。
「っ!!」
助けに向かおうとする紅馬を突き飛ばし、男は俺の目の前までやって来た。
どうやら狙いは、俺か。
「アンタが俺の仲間、やってくれたらしいな。……死ぬ覚悟出来てんだろうなぁ?」
そう言って俺の腕を掴み上げる。
「いっ」
ぎりぎりと絞められた腕の痛みに顔を歪ませた。
「お前、男か? こんな別嬪に手ぇ出すのは残念だが」
そう言って男は俺の鳩尾に蹴りを入れ、殴り、倒れた俺の髪を掴んで顔を上げさせる。
「どう償ってもらおうかな」
首元に突きつけられるナイフ。
刃先が触れて、その部分からは紅い血が流れる。
「死ねぇぇ!!」
男の声が遠くに響く。
あの時のように、
あの時、意識の糸が切れた時のように——