ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Monochrome World 【#04up】 ( No.6 )
- 日時: 2010/05/16 15:58
- 名前: 獅堂 暮破 ◆iJvTprGbUU (ID: D0RCrsH7)
#05 「人格」
「ぎゃぁぁあぁぁ!!」
耳を裂くような悲鳴に影近達は車に視線を向ける。
悲鳴を上げたのは、
夜暮でも
紅馬でもなかった。
今、車の前で倒れ呻いているのは犯人の一人だった。
頭を抑え、ゆらりと立ち上がり恐怖の目で見つめる先にいたのは
夜暮、だった。
しかし、あのまだ幼さの残る青年の姿はそこにはなかた。
あったのは、冷えた視線で犯人の男を見つめる青年の姿。
その目はあまりにも冷たすぎて、
それを見た影近達の背筋が凍る。
夜暮の手に持たれているのは手術用のメス。
恐らく紅馬の医療道具だろう。
紅く染まったメスを楽しそうにくるくると回す。
その姿にその場にいた全員が言葉に出来ない恐怖を覚えた。
その異常な様子に影近は先日された上司の話を思い出した。
「人格の変わる、不思議な少年……まさか」
影近は夜暮の元へ駆け寄り、拘束する。
このままではここにいる犯人全員を殺しかねない。
「雨岬!! 俺はコイツを落ち着かせる。そっちは頼んだ」
雨岬はコクリと頷き犯人の始末に取り掛かる。
腕の関節を押さえ、身動きの取れない状況の彼は影近を振り払おうと反抗する。
「落ち着け!! まだ誰も死んでいない、運転手も紅馬も無事だ!!」
影近のその言葉に夜暮は反抗を止めた。
「そうか……」
そう呟いて目を閉じた。
体から力が抜け、倒れそうな夜暮を影近と仕事を済ました雨岬が支える。
そして二人は目を見合わせ、安堵した。
「まさか、コイツが“奴”の言っていた子供なのか?」
影近は冷や汗を手で拭いながら呟く。
「もしかしたら、ね」
雨岬は運転手を後部座席に寝かせ、紅馬は治療を行う。
「そういえば、さっきの奴らは全員死なない程度にやっといたよ。すぐ担当者が来て片付けるって」
そう言って自分も車の運転席に乗り込む。
「俺が運転するから、影近は夜暮ちゃんのことよろしく」
「あぁ」
影近は一言そう返し、夜暮を抱いて車へと乗り込んだ。
「小笠の奴、喜ぶだろうな」
小さく笑みを浮かべて眠る夜暮の髪に触れた。