ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Monochrome World【05up】オリキャラ募集 ( No.16 )
- 日時: 2010/06/01 20:09
- 名前: 獅堂 暮破 ◆iJvTprGbUU (ID: D0RCrsH7)
#06 「処刑班」
夜暮、夜暮、と自分の名を呼ぶ声が聞こえる。
俺は今とてつもなく眠いんだ、起こさないでくれ。
そう心の中で呟く。
しかし声が止むことはない。
「——れ、夜暮」
観念した俺はゆっくりと瞳を開いた。
「影近さん、近い」
すぐ目の前にあった影近の顔を手を押し返し頭を上げる。
白を基調とした整理された部屋。
広さはそれなりで、部屋の中心には少し大きめの円卓と大きな液晶画面。
そして壁から下がる掲示板には多くの付箋が貼られている。
よく映画やドラマなんかで見る警察の会議室を想像してくれれば分かる。
「ここは?」
俺は少し頭痛の残る頭を抑え、目の前に立つ影近にそう尋ねた。
「あーここ? ここは俺等、つまり特別処刑班の会議室みたいなモンだよ」
人差し指をピンと立ててそう説明する。
確かにそれっぽいなーなんて考えながら俺は自分の寝ていたベッドから立ち上がり周りを見渡した。
「で、俺はなんでまたこんな所にいるのでしょうか」
そう問えば、影近は少し面倒そうな顔をした。
「えーと、俺の上司にお前を連れて来いって言われただけだからさ。詳しい事は分からねぇんだ」
俺はその答えに肩を落とし、頼りになりそうな人物を探す。
しかし残念ながら、雨岬も紅馬も誰もいない。
つまりこの会議室には俺と影近しかいないという事だ。
ある意味一大事である。
「お前、今なんか俺に対して失礼な事考えてるだろ」
意外に鋭い指摘だった。
これも失礼か。
なんてのん気な事考えていた。
すると影近のポケットから着信音らしきものが鳴る。
「あ、ちょい電話だわ」
そして発信者の名前を見て少し嫌そうな顔をする。
「もしもし、小笠さん?」
『“あの子”は目覚めたかい?』
「あー……夜暮ッスか? 起きましたよ」
『連れてきてくれないか? ぜひ会いたい』
「俺がですか? ……はいはい、分かりましたよ」
そこで通話は途切れる。
なんか俺の名前が通話内に出てきた気がする。
「夜暮、起きてすぐに悪いんだけどさ。俺の上司がお前に会いたいんだって」
そう言って俺の腕を引く。
「え、あ、ちょっと」
俺の質問なんか全部無視して腕を引かれるがままに外へ出る。
会議室を出れば、そこは普通の警察署内のような場所。
てか警察署内なのだろう。
「ここ、警察署?」
「あぁ」
一言短く返ってくる。
あまり、機嫌が良くないようだ。
そして俺はもう一つ気付く。
周りの冷たい視線が俺等、正しくは影近に向かっている事。
耳を澄ませばこんな会話が聞こえる。
「あ、処刑班の奴じゃん。早く行こうぜ」
「しかも総長、怖ぇー」
それに、
「あの後ろの子供誰だろ?」
「犯人、とか?」
いやいや違いますから。
俺は子供でもなけりゃ、犯人でもないです。
むしろ被害者です。
そう心の中で叫ぶ。
でも、今一番気になるのは処刑班に向けられる視線だった。
恐怖、
嫌悪、
そんな感情があの視線から伝わる。
処刑班は警察署内では好かれていない、むしろ嫌われているようだった。
「あのー……影近さん? 大丈夫、ですか?」
そう顔を覗き込んで訊けば、
「あー? 全然、てか気にすらしてねぇよ」
なんて笑って返された。
それに俺も微笑みを返した。
……あれ?
なんか馴染んじゃってない?
駄目駄目、駄目だってば。
こんないい雰囲気にしちゃ。
そう言い聞かせるが、彼のさっきに笑みがチラつきそんなものは消えてしまう。
あぁ、俺ってどうしてこんなに甘っちょろい人間なんだろう。
影近の後を追い、
俺は“第一班”のプレートの下がった部屋へと入った。