ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 魔眼探偵—紅夜— ( No.1 )
日時: 2010/05/16 15:25
名前: 月光 (ID: kEMak/IT)

プロローグ —紅夜ニ物語ハ始マル—

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

女は今にも泣きそうな顔で車のガラスで外から中を見ていた。

「こうするしかないの…もう」

そういった女の先、車の中には一つのかごが助手席におかれていた。

毛布に包まれた赤子…女の赤子である。

女は赤子を残したまま前へと歩き出した…車の中に置きざりにするなんて、この女は立派な犯罪者である。

産まれて間もない赤子…すぐに死んでしまうだろう。

後ろが気になり何度も車の方を振り返るがけして足を止めようとはしなかった…

そして、一歩踏み出せば崖から転落…そんな山の頂上に女はたった。

ここは自殺者が多いことでも有名な山だった。

それもそのはず簡単に車でのぼれるような広い道が頂上まで続いているのである。

そんなことから、この山…いや崖は【殺ヶ崖】と呼ばれるようになっていた。

すると突然車の中から赤子の泣き声が響く。

母親の死を予感したのだろうか、女の耳にもはっきりと聞こえていたはずだ。

「っ…ごめんね、お母さんをゆるして…」

そう言って、赤子の母親は。

女は、その場から姿を消した…

母親が飛び降り消えたその崖に赤子の声が響き渡る。

赤子は毛布にくるまれていたが、よく見ると右目に眼帯をつけていた。

一人の女性が崖から飛び降りたこの日—

この崖のある紅い月が昇るという村に—

18年ぶりに—

紅い月が昇った—

そんな紅い月の出ている夜、崖から飛び降りた女の子供である車の中の赤子の名前は—

知っていたか—

【紅夜】という名前だった—