ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 百物語図書館 〜 あなたのご所望は? ( No.4 )
日時: 2010/05/18 09:32
名前: バララ ◆1V5QpFfjiU (ID: xgraZn.Q)

第2話『故障中』


=某大型電化製品店=


「武田、これなんていいんじゃね?」

「ん〜、いや、まだいいのがあるはずだ」

俺は武田克志。

今、会社の同僚と一緒に事務所に置くための冷蔵庫を買いに来た。

俺らの会社は動かなくなった家電の修理が主な作業で、事務所にあるものの大抵は社員の要らなくなったものが大半だった。

だからなのか、昔から冷蔵庫だけは無かったらしい。

それでこの間、若手の社員の要望で新しく冷蔵庫を買うことになり、それを買ってくるのが俺と、俺の同僚の松山になったってわけ。

「武田さぁ、ちょっと選り好みし過ぎだって。もういいだろ、どれでも」

「いや、もっと安くていい感じの冷蔵庫があるはずだ」

俺がそう言い切ると、松山は勝手にしてくれと言った幹事のポーズを取る。

言われなくても勝手にするさ。

それからしばらくして、結局俺のいいと思うものが無かったので、松山に任せようと思ったときだった。

「おぃ、そこの冷蔵庫片しとけよ」

「え? なんでっすか?」

「それ、どっか壊れてるみたいでな。客から返品されたもんなんだよ」

それを聞いた俺は、これだと思い、すぐにその店員のところに言って交渉した。








「・・・で、これは何だ?」

「冷蔵庫だが?」

「それは分かる。じゃあ何故動かない?」

「故障してるからだろ」

「・・・・・・(怒」

あ〜、確実に怒りが湧いてきてるな、おい。

さっさと、言い訳しないとな。

「・・・おま———」

「いや、だって壊れてても俺らで直せばいいだろ?」

「———〜〜〜! だがな!」

うわ、やばっ! 被ってしまった!

だ、だけどこれ聞けばきっと・・・・・・

「で、でもな、松山」

「なんだよ!」

こ、こえ〜。

ここまで怒った松山見たのはじめてかも。

「故障してるおかげで、この冷蔵庫を半額以下で買えたんだぜ?」

それを聞いた松山のすぐにでも襲いかかれる姿がピタリと止まった後、いつもの状態に戻る。

「・・・なるほどな。考えたよな、お前も」

「だろ?」

俺らは修理業者の人間。

つまり、故障している物を直すのが得意。

だから、故障した冷蔵庫を買ったのだ、通常の半額以下で。

俺の考えを察したのか、松山は隣の道具小屋に向かう。

「それならさっさと直すか。武田、お前も早く着替えて来い」

「おう、たりめぇよ!」

その後、俺たちは冷蔵庫を解体し、故障の原因を探した。

「ん〜と・・・あぁ、これだな」

と、松山が何かを見つけたらしく、そちらに目をやる。

すると、松山が冷蔵庫の基盤を持っているのに気が付いた。

俺も松山の方から基盤を見ると、主要回路らしきところが切れていた。

修復不可という程ではないので、すぐに俺は新しいのと交換するため、道具小屋に取りに行こうとする。

「あ、このタイプならA3の棚の上から三番目右端のかごの中な!」

「了解!」

さすがは松山、道具の場所は熟知してるってか。

俺は道具小屋に入り、言われた場所から必要な数を持って、部屋を出た。

「ん、松山?」

部屋を出ると、さっきまで居たはずの松山の姿が無かった。

どうしたのかとも思ったが、ふと時間を見るとすでに夜中の0時を回っていたことに気付く。

「(修理し始めてもう4時間も経ってたのか)」

それに気付いた俺は、松山はトイレにでも行ったのかと思い、気にすることなく作業を続けようとした。

すると、基盤が多少変化しているのに気が付く。

「あれ、これって・・・俺に取り行けって言ったやつじゃん」

もともと切れていた回路の場所には、新しく回路が繋がれていた。

ただ気になったのは、新しく付けたはずの回路が切られていること。

「嫌がらせかよ、戻ってきたら一発殴ってやる」

そう呟きながら、俺は作業を再開する。

だが、しばらく経っても松山は戻ってくることは無かった。