ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 百物語図書館 〜 あなたのご所望は? ( No.7 )
- 日時: 2010/05/18 16:41
- 名前: バララ ◆1V5QpFfjiU (ID: xgraZn.Q)
第3話『トンネル』
「ちょ、先輩待ってください。まだ施工後の写真撮ってないっす!」
俺は柏木 修平太。
某有名鉄道会社の協力会社の社員として働いてる。
現場には出るけど作業員じゃないんだよな。
「まだって、照明片す前に撮っとけよ」
「んなこと言ったって、他の作業の施工中の写真撮ってたんだから仕方ないじゃないっすか!」
「言い争う前にさっさと写真撮れ!」
「はい!」
俺の会社の仕事としては、新人は作業員の手伝いなんかをしてるけど、大抵の人は作業員に指示を出す工事管理者や作業責任者として現場に行く。
ちなみに俺みたいなやつは、施工前・施工中・施工後の写真を撮って、保存しておく。
その写真がないと発注側から色々言われるから面倒なんだよな。(苦笑
「それじゃあ今日はお疲れ様でした! みんな解散!」
ちなみに、軌道工事って大抵一夜作業なんだよ。
たまに何日かに分けてやる工事もあるけど、ほとんどは一晩で終わる。
「よし、修。お前帰りの運転な」
「え、マジっすか」
「あぁ、マジマジ」
「・・・ど、努力します(汗」
俺が運転かよ・・・ちょっと眠いしw
事務所まで十数kmもあるんだよなぁ。
この事務所、範囲広すぎだって、絶対。
「チャッチャと運転しろ」
俺がめんどくさそうな顔をしていると、先輩が背中を叩いてくる。地味にいてぇ。
仕方なく、俺は運転席に乗って、自動車を発車させる。
俺が運転を始めてから数分経ってから、ある事を思い出す。
「そういえば先輩」
「なんだ?」
「この辺でしたっけ、例のトンネル?」
例のトンネル。
そこは俺の事務所で少し噂になってるトンネルだった。
うちの事務所の人間には何も無いが、よくそこで事故が起きるので気を付けろとは言われている場所だ。
「そうだな、あともうちょい走らせれば通るな」
「うへぇ、マジっすかぁ」
先輩の回答に、俺はあからさまにいやな顔をした。
俺は怖い話などが大の苦手だからだ。
そんな話をしていると、小さな交差点を通り過ぎた。
「今の交差点な」
と、何の前振りも無く先輩が話し始めた。
また怖い話でもするのか、と思ったが、
「左に行けばトンネル通らずに帰れたぞ」
俺はずっこけそうになった。
「ちょ、先言ってくださいよ!?」
「わりぃ、忘れてた」
そんな感じでくだらない話をしていると、例のトンネルの入口が見えてきた。
この辺のトンネルにしては他のものより薄暗く、やっと対向車が見えるくらいだった。
「覚悟決めろ、どうせ通るんだから」
「わ、分かってますよ!」
俺は強めに答えると、少しスピードを上げ、トンネル内部に突入する。
俺は前以外は見ないと決めていた。
もし、何かに驚いてハンドルを急にきったりすると危ないからだ。
それから2分もしないうちに、俺たちはトンネルを抜けた。
「ふぅ、何も無くてよかったっすね」
と、俺は先輩の方を向こうとした。
「待て! こっちを見るな!!」
が、何故か先輩がそれを阻止した。
「ぇ? なんでっすか?」
「どうしてもだ! いいな!!」
「は、はい・・・」
とりあえず、訳も分からず俺はそのまま車を走らせ続けた。