ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 紅の花が舞う ( No.11 )
- 日時: 2010/05/23 21:23
- 名前: ユエ (ID: WwOXoFC5)
「出でよ、朱雀っ」
真桜が自分の血を付けた白い紙を舞い上げる。
すると、白い紙は大きな朱雀へと形を変える。
朱雀は怨霊に向かって、光のように飛んでいく。
「そういえばッ、紅葉はいないのかよっ?!」
日本刀で怨霊を攻撃しながら、総悟が叫ぶ。
少し離れた場所から真桜が、
「知らないわよー」
とか呑気に答えやがる。 畜生。
紅葉っていうのは、おれたちの仲間的存在だ。
「はあああっ!」
おれが高く跳び、上から斬る。
これで真っ二つに割れて、ハイお仕舞い。
───となるはずだった。 だって、いつもそうなるし。
だが、今日は違った。
怨霊は黒いもやもやした腕で、おれの体を掴む。
「ぅわっ?!」
上では、真桜の式神でもある朱雀も捕まれている。
ぐい、と引き寄せられるとそのまま、
「うわあ─────ッ!」
思い切り、近くの壁に叩きつけられた。
朱雀はただの紙切れに戻ってしまったらしい。
背中が痛み、額からは血が流れてきている。
だが、刀は手放さない。
「……ってェ」 「総悟!」
遠くから真桜の叫ぶ声がする。
あ、ヤベ。 頭くらくらしてきた、かも……。
◇ ◇ ◇
「総悟!」
私は総悟の名を呼んだが、相当なダメージを受けたようだった。
瓦礫の陰で、よく見えないがヤバそう。
ゆっくりと怨霊が総悟に迫っている。
私がもう一度、式神を呼ぶための準備をした瞬間だった。
「やっぱりここは、わたしの出番だよねっ」
ふわり。 音もなく着地する一人の少女。
肩までの明るい茶髪に、大きな二重の瞳。
そして、右手に握られた日本刀。
「も、紅葉!」
藤堂紅葉。 私と総悟の仲間である。
平安時代から続く、最強の鬼の家系の娘である紅葉。
鬼とは、
人間以上の身体能力と回復力を持つ、最強の妖怪。
その中でも藤堂家は最も最強なのだ。
「総悟の治癒、よろしくねっ」
そう言うと、地面を軽く蹴った。
◇ ◇ ◇
総悟が相当なダメージ受けたっぽい。
真上から、それが確認できた。 痛そうだな……。
さて、ここはわたしの出番だよね。
わたしは屋上から、軽くジャンプして着地した。
真桜が驚いた顔で見ている。
「も、紅葉!」
「総悟の治癒、よろしくねっ」
それだけ言うと、わたしは地面を軽く蹴る。
鬼は人間以上の身体能力を持つ。 あとは回復力。
なので軽く地面を蹴るだけで、一瞬で怨霊の目の前に来ることが可能。
ちなみに、軽くジャンプすると建物と同じくらい跳べる。
「桜木を乱す怨霊、このわたしが退治する!」
静かに鞘から、代々伝わる刀を抜く。
鬼刀・百花。
怨霊がわたしを掴もうとしたが、わたしは軽く避ける。
わたしは後ろに回りこみ、背後から斬りつけた。