ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 紅の花が舞う ( No.22 )
- 日時: 2010/05/31 17:58
- 名前: ユエ (ID: Am5TIDZx)
「も、もう駄目れすぅ〜………」
水巳ちゃんがガラガラの声でそう言い、座り込んだ。
久し振りに言霊を使いすぎた、ということがすぐに分かる。
ちなみに、総悟はまだまだ動ける感じ。
「み……、“水”」
水巳ちゃんがゆっくり、水を飲む。
「まったく、総悟はやりすぎなのよ!」
「んじゃ、真桜がおれの相手してくれる?」
一瞬で、真桜のまわりの空気がピィン、と張り詰める。
あ〜ぁ……、面倒くさいことになりそうだな……。
わたしはそっと、水巳ちゃんを総悟と真桜から離した。
次の瞬間、離して良かったと心の底から思った。
だって、本気バトルが始まったから。
「十二天将、前五、青龍!」
陰陽師である真桜からの攻撃。
簡単に言うと、真桜は式神を呼び出したのだ。
陰陽師は難しいから、わたしもよく分からないんだけどね……。
真桜の真上に、本物の青龍が現れた。
初めて見た時は、素直に驚いていたが、今はもう慣れた。
「そんなの、ただの紙だろォ?!」
日本刀を握り締めた総悟が、青龍に斬りかかる。
ちなみに総悟の日本刀は、代々二宮家に伝わる刀。
夜兎月(ヤトヅキ)というらしい。
「なッ……、失礼な! やってしまいなさい、青龍!」
───あ、やばい。
青龍が本気出しちゃったから、総悟が危ないかも……!
わたしが止めようと、走り出した瞬間だった。
『───仲間同士の喧嘩はよくないよ♪』
総悟と青龍の間に、一匹の白い狐が割り込んだ。
妖狐、白狐であるツバキだ……!
「つ、ツバキさま……っ?!」 「白狐……!」
急いで総悟は刀を鞘に入れ、真桜は青龍を戻した。
『久し振りだね、二宮くん、木下ちゃん。
それと、椎名ちゃんと紅葉ちゃんも』
どうしてわたしだけ名前なんだろ……。
ま、いいか。
『とにかくね、ボクは仲間同士の喧嘩は駄目だと思うよ?』
「ご、ごめんなさいっ」
真桜が総悟の後頭部を掴み、無理やり頭を下げさせる。
勿論、真桜も頭を下げている。
基本、皆は妖狐に対して敬語を使ったりする。
だがわたしは使わない。
唯一タメで喋るのが、藤堂家だけである。
鬼と狐の地位は等しい。
『うん、いいよ。
───それと紅葉ちゃん? そろそろ帰ったら?』
「へ?」
言われて、時間を見る。
「あぁっ、怒られちゃうかも!」
ツバキが笑った。 わたしの顔は真っ青になったのかも。
今は六時半を少し過ぎたところ。
お祖母ちゃんは時間に厳しい。
今日は六時半までだったんだよね。
本当はもう高校生なのに。
って思ったことがあり、一度訊いてみたんだよね。
高校生なんだし、時間なんて決めないで!
そしたらお祖母ちゃんは怒った。
まだまだ、お前は子鬼以下なんじゃ!!
鬼婆だよね……。
「じゃあ、紅葉。 また明日ね?」
「明日なぁー、紅葉」
「さよなら、藤堂先輩! 怒られないように気をつけて下さいねーっ」
真桜、総悟、水巳ちゃんが手を振る。
わたしも手を振りながら、屋根から屋根へとジャンプした。