ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Chapter 1 崩壊 ( No.16 )
日時: 2010/05/23 15:20
名前: 更紗蓮華 (ID: lNJ.MCVY)

大きな、図書館のようなところ。
その真ん中の大きな机で、少女が一人本を読んでいた。

暗い灰がちの長い銀髪に、深い藍色の目。
白のシンプルなワンピース。
そして、わずかに漂う気品と、威圧感。
街などにいたら、どこぞのお嬢様かと思われるだろう。

・・・その両の手に、手枷がついていなければ。
ながい鎖が付いたその枷には、瞳と全く同じ色をした、ひとつの石が埋め込まれていた。


・・・今日も私は、本を読みます。
今読んでいる本によると、豊かな国では、子どもは必ず学校に行かねばならないことになっているそうです。
でも、私は行っていません。

・・・でも、“なぜ私が学校に行っていないのか”というのは、私が覚えるべき事柄の中に入っていませんでした。
だから、そんなのどうでもいいことなのでしょう。

私は、数百ページの本を一冊20分のペースで読んでいきます。
本を読んでいるのは14時間なので、一日に42冊の計算です。

・・・でも、“このペースが早いのか、遅いのか”というのは、私が覚えるべき事柄の中に入っていませんでした。
だから、そんなのどうでもいいことなのでしょう。

今日も、私は・・・

と、その時。

ガラガラッ

不意に、天上の欠片が落ちてきた。
とっさに、両手で頭をかばう。

ガキッ

欠片は手枷に当たり、両方とも割れてしまった。

・・・壊れてしまいました。でも、これにはいったいどんな意味があったのでしょう・・・?

「おい、壊すな!中の奴に当たったらどうするんだ!」

入口の方から、声がする。

パラパラ・・・

天上から、小さな欠片が落ちてきた。

・・・“早く、此処を出ないと。”
まだ本を読み終わっていないですが、命にはかえられません。

私は、声のしない裏口の方から外に出ました。


その後。

「・・・居ないぞ?」

「クソッ、逃がしたか!」

「だが、人が入った様子はなかった」

「・・・まさか、自分から逃げた?」

「感情を殺されているのでは、なかったのか・・・?」



——その少し前、どことも知れぬ、建物。

「・・・また、逃げられたのか」

銀の髪、碧の瞳。長身の男性が、鋭い目付きで自分の目の前にいる男を見つめていた。
腰には、剣を2本下げている。

「も、申し訳ございません!」

男は、小刻みに震えている。

「・・・逃げられたのなら仕方がない。お前は下がっていろ」

無表情のまま、そう静かに言う。

「はっ!」

男は、転げるようにその場を立ち去った。

「・・・次はF部隊とL部隊に行かせろ。それと・・・イリーナ、お前も行け」

隣にいた少女に、そう告げる。

プラチナブロンドを二つにまとめ、ソバカスと色の違う目が印象的だ。
茶色の右目、青の左目。

「・・・・・・」

彼女は、無言でその場を立ち去った。