ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Chapter 2 追手・・・? ( No.24 )
日時: 2010/05/24 06:37
名前: 更紗蓮華 (ID: lNJ.MCVY)

——とある喫茶店。

黒髪に、深緑の目の少年が、お茶を飲んでいる。・・・大人びて見えるが、よく見るとまだ15歳ほどだった。
赤、橙、黄、紫、藍、水色、黄緑、深緑、黒、白。
首には、10色の石が埋め込まれた、トップの大きめのペンダントのようなものをかけている。


・・・ここのお茶は美味しいな。

僕は、ちょうどそこにあった喫茶店で、休憩中。

・・・なんか見られてる気もするけど、敵意も感じないし・・・いっか。

あんなことがつづいてたんだから、ちょっと贅沢してもいいよね。心の休憩ってことで。
そう思って・・・

「お待たせいたしました」

テーブルの上に、アップルパイが置かれる。

・・・ケーキを頼んでしまった。

わあ、どうしよう。余裕がないってわかってたのに。
・・・いやね、普段は使わないし・・・いいかな、と。

テーブルの上のケーキは・・・すごく美味しそう。

・・・ケーキなんて、久しぶりだな。

ひとくち。

・・・美味しい。



食べながら、ちょっと思った。

“あいつ”の料理、また食べたいな。
でも・・・

“あいつ”は、もういない。もう、会えない・・・。



・・・おっと、センチメンタルになってしまってた。
せっかくのケーキ、楽しまないとね。

そう思って、ケーキを口に運ぼうとする・・・が。

・・・やれやれ、このタイミングでか。

僕は、立ち上がる。
・・・ケーキは惜しいけど、これじゃあしょうがない。

会計は先にするタイプの喫茶店だったので、すぐに店を出た。

・・・路地裏に10人ずつ、そこの屋根の上に7人、半径7m以内の人ごみの中に40人。

僕は素早く状況を判断する。

これまた、初めからずいぶん大人数だね。
・・・喫茶店に入っている時に、包囲したのか。

とりあえず、路地裏に入っちゃえば全員追ってくるだろう。

そう思って、一番近くの路地裏に入る。

・・・無関係の人を、巻き込むわけには行かないだろ?

奥に進んでいくと・・・やっぱりな。

前と後ろに、合わせて20人ほど現れた。

「・・・挟み撃ちって訳か」

僕がそういうと、全員が一斉に飛びかかってきた。

おっと。

僕は、真上に飛んで避ける。・・・と。

バサッ!

「ッ!」

いきなり、屋根の上から網が降ってきた。
体に、絡まる。

・・・くそ、外れない。

「特製の鋼網だ、逃げられまい!」

「俺たちを眠らせても、網からは出られないからな!」

「さあ、観念しろ!」

男たちは、ニヤニヤと笑いながら、近寄ってくる。

・・・仕方がない。

僕は、首に下げたペンダントを軽く握り締める。
・・・呼応するように、すべての石がわずかに光る。

大男が一人、前に出てきた。

「・・・——」

僕は、呟く。聞き取れない程度の声で。

「ああ?なんだ?」

「・・・能力が使えないのか。それならば好都合」

男たちはいろいろ言ってるけど・・・
僕、今チカラ使ってないけど?

「・・・ごめんね、“風姫(ふうき)”・・・君のチカラ、少し借りる!」

ゴォッ!

黄色の石が光り輝き、突風が巻き起こる。
土埃が上がり、視界が埋められる。

「な、何だ?!」

風は、少しずつ収まっていく。

だけど、完全に収まったときにはそこに僕の姿はなかった。


——少し離れた路地裏。

あ、危なかったかも。

「・・・ありがとう、風姫」

リ・・・

輝いていた石は、小さな音をたてると、元に戻った。



屋根の上から、彼を見ていた。襲撃するタイミングを見ていたんだけど・・・

・・・たかがケーキの値段で一喜一憂したり、一番安いアップルパイを、本当に美味しそうに、顔をほころばせて食べたり。

そんな姿は・・・少し親しみが持てた。

・・・私なんかとは、比べ物にならないくらい、幸せな一生だったのでしょうね。


・・・しばらくすると、彼は動き出した。
店を出たと思うと、すぐそばの路地裏に入っていく。

私は、屋根を慎重に降りて、彼らがいるところから少し離れた路地裏に入った。

・・・ここで最後。

私は、特別なろう石を使って地面に魔法陣を書いていく。
首に下げた、琥珀のペンダントが揺れる。

既に、彼の周りは陣だらけ。

偶然、初めに入ったところはまだ書いていなかったけれど。

・・・出来た。

陣は、すぐに完成する。

ゴォッ!

「な、何だ?!」

そんな音が聞こえた。
と、いきなり目の前に小さな竜巻が起こる。

「ッ?!」

思わず後ろに飛び退き、置いてあった箱の裏に入る。

・・・竜巻が消えると、そこには彼がいた。
手に握ったペンダントが、黄色く光っている。

「・・・!」

現れたその場所は、ちょうど魔法陣のど真ん中。

すぐに発動させなきゃ。
そう思ったけど・・・何故か体が動かない。

「・・・ありがとう、風姫」

彼は、息をつくとペンダントに向かってそういった。

リ・・・

かすかに音を立てて、光は収まる。
彼は、静かに微笑んだ。

・・・捕まえなくちゃ。

そう思って、体を動かす。
・・・すぐに、見つかってしまった。

「・・・君も、追手かい?」

静かに、彼はそういう。
返事をせずに、私は念じた。

彼の足元の魔法陣から、何本もの黒い帯が出てきて、彼の体にきつく巻き付く。

「・・・貴方は、私の魔法陣の上に立っていたのよ。もう逃げられないわ」

私は、そう告げる。だけど彼は、表情を変えずに言った。

「・・・君も、戦争をなくすためとかなんとか言われたのか?」

・・・何を言っているの?

「・・・僕のチカラを使っても、平和なんて作れないよ」

「平和があるから、戦争が成立するのよ。最初から平和なんて無ければ、戦争も無いわ」

私は、そう言う。本当に、そう思う。

「それで、不幸になる人・・・君みたいなのが増えたとしても・・・?」

ッ!!

な、なんで・・・。
なんで、知っているの?

「ダメ、だよ。・・・“ほどけろ”」

彼がそういうと、それに従うように魔法が解ける。
魔法陣も、消えてしまった。

私は、その場にペタン、と座り込む。

彼は、いつの間にかいなくなってしまった。

「・・・もうこんなの嫌!私はただ本を読んで、勉強がしたいのに!」

叫び声が、こだました・・・。


イリーナをいっぱい出してみました。けど・・・
こんなんで合ってますか?
勝手に琥珀をペンダントにしちゃったり、サンボイのセリフに若干の付け足しをしたりしてしまいましたが、ダメだったら即刻言って下さい。