ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Proligue 2 身代わりの“心映し”2人 ( No.3 )
- 日時: 2010/05/22 19:33
- 名前: 更紗蓮華 (ID: lNJ.MCVY)
とても広い、図書館のようなところ。
そこには、世界中の“知識”に関する本が集まっていた。
中には、国の機関が門外不出にしているはずのものもある。
・・・そこで、一人の少女が暮らしていた。
ここは、私の住んでいるところであり、私の仕事場。
本を読んで、その内容を覚えるのが仕事なんですから、仕事場と言っても差し支えないでしょう。
ここで、私は世の中のことをすべて“記憶”しています。
気がついたらここにいました。外に出たことは、ありません。
ですが、外のことのすべてを知っていると私は思います。
・・・いえ、すべてを覚える、途中でしょうか。
私は、ここの本すべてを“記憶”した時、外に出ることになるそうです。
ですが、特に出たいとも思いません。
すべてを知っているのですから、ここに居ようが外に居ようが、何も変わらないでしょう?
私は、すべてを知っています。
この世界や国、地域の理、法律、文化、歴史、地理。
現在解明されている、あらゆる学問、技術、魔法。
生物の生態。
そして、人の心や、行動。
本で読んで知っていますから、外に出ても、何一つ不自由なく生活できるでしょう。
だけど、それも仕事なのですから、私は外にでるのです。
大きな、街。そこに住む、幸せな一家。
ごく普通で、ごく当たり前の生活。
・・・そこで、一人の少女が暮らしていた。
「ただいまー!」
私は、今日も楽しい!
友達もたくさんいるし、家族も優しいし!
「おかえり!・・・今日も、本読みなさい?」
「はーい!」
私は、書斎に急ぐ。
本を読むのが、私の仕事なんだって!
いろんな国、いろんな時代の物語。
結構感動ものも多くて、しょっちゅうもらい泣きしちゃうんだよね。
・・・私が本を読むのは、早く人の心が分かるようになるためなんだって。
ついこの間、お父さんが話してくれた。
確かに、話し方以外は大人っぽいってよく言われるけど、それが目的だったんだね。
人の心が分かったら、人の役に立てるかな?
でも、私は世の中のことあんまり知らないからなあ・・・
お母さんは、“知識”の本より、“心”の本の方が楽しいって、役に立つって言う。
だけど、私はいろんなこと知りたいな。
・・・そう思って、この間お父さんの目を盗んで“知識”の本を読んだけど・・・
・・・ぜんぜん覚えられなかった。やっぱり、楽しくないから?
そんな本も楽しいと思えるように、“知識”を覚えられるように、なりたいな。