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●１章 part伍

このまま寝てしまいそうだった。
暖かな風が頬にあたり、空気が澄んでいて気持ちが良い。
空に浮かんでる雲達がゆっくり動いて行く風景も良かった。

「ずっとこのままでいたい……」

ここに寝転ぶと、何もかも頭から離れていく。
記憶がない事の苦しみや、遊衣との過酷な訓練や、最近起こりだした左眼の痛みや……もう全てが。
左眼の痛みは死にそうなぐらいに痛い。
時には、見覚えのない風景が左眼に映しだされる。
その時は背筋が凍りつく。しばらくしていれば痛みは消えるが、あの痛みは耐えられない。

「なんて……無理か……」

まぁ、これが神が決めた運命という物だろう。
どんなに祈ったって変わりはしない。
零衣は気を取り直し、そろそろ村に戻ろうとした時…



───パァン！


「え……!?　銃声!?」

静かな森の中に銃声が響いた。しかも、そんなに遠くはなさそうだった。


───パァン！　パァン！


また続けて銃声が響いた。

「……行ってみよう……」

零衣は銃声が鳴った森の奥へ駆け出した。